【春野菜物語】エンドウ(サヤエンドウと実エンドウ): fresh green peas with or without pods

エンドウは豆でありながら野菜としても親しまれている植物です。花が咲いた後にできた果実(サヤと中のマメ)が未熟な状態のとき、野菜として扱われます。また、トウミョウ(豆苗)は種子から出てきた若い芽や茎葉です。流通品は、それぞれに適した品種になっていますが、一回植えたら何度もおいしいのがエンドウです。今回は、豆の話も含めてちょっとややこしい(かもしれない)エンドウについて解説していきます。

※野菜名の表記について。「野菜物語」の本文ではカタカナ、レシピではひらがな/漢字で表記していきます。

エンドウの原産地・歴史・種類

利用の歴史は古い

エンドウは、メソポタミア文明のあった中東から中央アジアが原産とみられています。野生種の近縁種は、このエリアから東西へ分れて伝播し、西は地中海沿岸地帯からヨーロッパ北部方面へ、東は中国西域から中国、日本方面へと伝播していきました。
青銅器時代の住居跡から種子が発見されたことから、作物としての歴史は古く、ギリシア人・ローマ人はすでに紀元前からエンドウを栽培し、その種実を食べていたと考えられています。
近代的品種は、エンドウがヨーロッパ中部および北部に伝えられてから成立したようです。イギリスへはノルマンディの侵攻(12世紀頃)とともに「グリーンピース」が伝えられ、16世紀には、エンドウの種子に白、黄色、緑、しわのあるもの、丸粒など、さまざまな品種があることが記録に残されています。
エンドウは、赤系の花がつく種類(フィールドピー)から白い花のつく種類(ガーデンピー)に分化したと考えられています。ガーデンピーはグリーンピースなどのむき実用品種にあたり、ヨーロッパでさらに品種改良が重ねられました。
アメリカ大陸へは、まず大航海時代に伝えられ、重要な食用作物になりました。その後、アメリカに移住したヨーロッパ人らが新種を導入し、さらに栽培が盛んになったとされています。

日本でのエンドウの広がり

エンドウが日本へいつ頃伝播したのかは定かではありませんが、1000年程昔の書物に「のらまめ」という名前で記載があるようです。東方に伝播したエンドウはおそらく赤花のフィールドピーに属する品種で、江戸時代までは野菜というよりも乾燥種実としての利用が主だったとみられます。また、エンドウは、大豆などよりも重要な豆・穀物ではなかったため、ヨーロッパよりも品質への追求が少なく、野菜としてのエンドウに関する記録もほとんどありません。
現在の野菜としてのエンドウは、明治時代以降に欧米からの導入されたもので、そのうちのいくつかの種類が定着し、発展したものと考えられます。第二次世界大戦後、再び欧米種の導入が試みられ、それまでの在来種と交雑させるなどして日本の風土に合った品種が確立しました。

野菜としてのエンドウ

エンドウはマメ科に属する植物で、豆としての利用のほか、野菜としても食べらる利用範囲が広い植物です。サヤごと食べる「サヤエンドウ」(キヌサヤやスナップエンドウ)と、サヤは食べずに中の未熟豆を食べる「実エンドウ」(グリーンピースやうすいえんどう)、そして、エンドウ豆から出た芽の部分を食べる「トウミョウ」(豆苗)が野菜としてのエンドウです(知っ得!知ってたら上級者【絹さや】【グリンピース】【エンドウ豆】の違いを知っていますか?もご参照ください)。

いろいろなフェーズで食べられるエンドウ

サヤエンドウ

キヌサヤ/サヤエンドウ
サヤの長さが5-6cmのときに若採りしたものが「キヌサヤ種」で、流通の大変を占めています。関東ではその種の名前のまま「キヌサヤ」と呼ばれています。新鮮なサヤをつかむとキュッキュという音がしますが、これが衣擦れの音に似ていることから付いた名前だとされています。

サヤの長さが10cm以上と大型な「オオサヤ種」もあります。こちらは「オランダサヤエンドウ」といわれていることもあります。

花が咲いた後にできるサヤエンドウは中の豆がとても小さく、豆というよりサヤを食べる感覚の野菜ですが、その豆は割とすぐに育って大きくなります(知っ得!知ってたら上級者【絹さや】【グリンピース】【エンドウ豆】の違いを知っていますか?もご参照ください)。

スナップエンドウ
通常、エンドウのサヤは、豆が大きくなると硬くなり食べられなくなります。しかし、豆が育ってもサヤが硬くならず、肉厚のサヤごと食べられる品種「スナップエンドウ」がアメリカで開発されました。日本本に導入されたのは1970年代の終わり頃です。スナップエンドウのスナップは、snapというポキッとかパチッという音に由来しているようです。スナックエンドウと呼ばれることもありますが、1983年(昭和58年)農林水産省により名称が統一され、「スナップエンドウ」が正式名称となっています。なお、品種名として「スナック」がつくものも存在しますのでいずれも間違いではありません。

実エンドウ

実エンドウは、サヤは食べずにサヤの中の未熟な豆を食べるエンドウです。サヤエンドウに対して、実を食べるので実エンドウ、というわけです。グリーンピース、ウスイエンドウなどが該当します。ほとんどが缶詰や冷凍食品として加工されていますが、4~6月の旬の時期には生のものが出回ります。その風味は格別で、時期になると「絶対に豆ご飯にして食べる!」という人もいるくらいです。
ウスイエンドウは、明治時代にアメリカから導入されたむき実用のエンドウが大阪府羽曳野市碓井で栽培されたことが名前の由来といわれ、「なにわの伝統野菜」となっています。

トウミョウ

中国料理では、エンドウの若い茎葉を利用します。現在スーパーなどで流通しているのは豆から発芽しですぐのスプラウト部分の「芽生え」タイプで、「本来の豆苗」とは少し違いますが、炒め物などで歯ごたえや風味を楽しめます。流通品は、再生野菜として再度楽しむことができます。パックで水耕してもよいですし、土に植えるとサヤエンドウが取れます。さらにそのままうまく育てばエンドウ豆が採取できるようです。

豆としてのエンドウ

ここで、豆としてのエンドウと、ついでの余談として豆や種実類、ナッツの分類の話を少し書きたいと思います。
日本で食されるエンドウ豆のおもな種類は、種実の色が緑色の青エンドウと赤褐色の赤エンドウです。青エンドウは「うぐいす豆」という名称で煮豆、甘納豆、うぐいすあんになっているほか、炒り豆、フライビーンズなどの原料になっています。スナック菓子の原料としても利用されています。赤エンドウは、みつまめや豆大福、落雁の原料としても利用されています。

海外には黄色の白エンドウや灰褐色に濃色の斑点が入ったウィンターピーなどがあるようです。黄色と緑色、しわがあるかないか、なんていうと、まさにメンデルの遺伝の法則を思い出して(あやふやだけど)しまいますね。

余談1:豆って何?マメ科の植物の種子=豆

エンドウのほか、アズキやダイズ、インゲン、ササゲなどの、マメ科植物の成熟した種子を「豆」といいます。通常、自然乾燥または人工的に乾燥させてあります。ピーナッツ(ラッカセイ:落花生)もマメ科なので植物学的な分類をすると豆です。

しかし!食品成分表では、脂質含有量が多いため、豆類ではなくアーモンドやピスタチオ、ゴマやカボチャの種などが分類されている「種実類」として扱われています。食品成分表での種実類とは、穀物や豆以外の種子およびその製品で、いわゆる木の実の仲間、○○ナッツといわれている食品です。ピーだけど、ナッツっぽい、ということなんでしょうかね。

余談2:カカオやコーヒーはマメ科!?

私たちはコーヒーやカカオに「豆」を付けて呼ぶことがあります。が、これらはいずれもマメ科の植物ではありません(コーヒーはアカネ科、カカオはアオイ科)。大きさなど、見た目が豆のようだから「豆」と呼んでいるだけみたいです。コーヒーやカカオも種実ではありますが、いわゆるナッツ類のようにポリポリ食べるわけではないので、食品成分表では種実類には分類されず、嗜好品や菓子、フレーバー由来で乳類などに分類されています。

最近スーパーフードとして注目されている「カカオニブ」(チョコレートになる前のカカオを破砕して胚乳部分を分離したもの。さらに細かく磨砕してペースト状にするとチョコレートのベースであるカカオマスになります)は、種子部分を食べるので、この場合は種実類として扱ってもいいかなと思います。

余談3:欧州での豆の分類例

海外というか、ヨーロッパでの豆の分類についても調べてみました。EUFIC(欧州食品情報評議会)が以下の図をホームページに掲載しています。日本語では「豆」であり、感覚的にbeansは勾玉っぽく、peasは丸っこいもの、と分けていましたが、ここではその謎は解けず、legumesとpulsesの違いについて解説されていました。Legumesは豆が入っている状態のサヤ、pulse(脈拍のpulseと同じです)はサヤから外れて独立した粒々のことを総称しています。わかりにくいから解説しているのでしょうね。ん?Legumeはフランス語で野菜という意味だったような!?

EUFICによる豆の分類例 www.eufic.org/en/healthy-living/article/pulses-qa


そうすると、スナップエンドウも含めてサヤエンドウはlegumesのfresh peas(キヌサヤはsnow peasともいいます)で、実エンドウはpulsesのfresh peas、完熟エンドウ豆はpulsesのdry peasということになります。ちなみに、サヤインゲンはlegumesのgreen beansということになりそうです。soybeansは絵では完熟のサヤっぽいですが、枝豆はgreen soybeansになりそうです。枝豆を食べる文化はヨーロッパにはなさそうですが、そのうち”edamame”などの名前がついて認識が更新されるかも知れません。

エンドウの生産地・分布

世界の生産状況

Food of Agriculture Organization(FAO)のサイトで調べたところ、2022年の野菜としてのエンドウ(サヤエンドウと実エントウの合算)の世界総生産量は、約2,095万トンでした。最も多かったのは中国本土で、次いでインドでした。そして、この両国で世界のおよそ85%を生産していることが示されました。日本は、27位でした*。

世界のエンドウ(サヤエンドウ+実エンドウ)の生産量 約 2000万トン

*The Food and Agriculture Organization (FAO). FAOSTAT https://www.fao.org/faostat/en/#home


国内の生産状況

野菜としてのエンドウについて、農林水産省の統計ではサヤも食べる「サヤエンドウ」とサヤの中の未熟な実(豆)をたべる「グリーンピース」(実エンドウ)で分けられていました。

サヤエンドウ

令和4年度の総収穫量は19,300トンで、そのトップは鹿児島県で4,980トン(全体の26%)。次いで愛知県(8%)、福島県(8%)、熊本県(5%)、和歌山県(4%)と続きました。16位以降の詳細は以下のとおりです(図)。

日本のサヤエンドウ収穫量 19,300トン〔令和4年度)内訳(農林水産省 作況調査 第1報より作成より作成)

その他(16位以降)に含まれる都府県は以下の通り17。

実エンドウ(グリーンピース)

令和4年度のグリーンピースの総収穫量は4,900トンでトップは和歌山県で2,700トン(全体の42%)でした。次いで鹿児島県(13%)、北海道(7%)、大阪府、熊本県(同4%)と続きました。16位以降の詳細は以下のとおりです(図)。※農林水産省の作況調査での表記は「グリーンピース」です。

実エンドウのなかでも「うすいえんどう」はなにわの伝統野菜として知られており、関西地方の春先には欠かせない食材となっています。なお、和歌山県に渡ったうすいえんどうの一部は和歌山県独自のブランド「紀州うすい」となっているようです。


日本の実エンドウ(グリーンピース)収穫量 4,900トン〔令和4年度)内訳(農林水産省 作況調査 第1報より作成より作成)

その他(16位以降)に含まれる都府県は以下の通り17。

多く出回るのは4月、大阪市場の実エンドウは東京の2.7倍

サヤエンドウ(キヌサヤ)

サヤごと食べるエンドウは、キヌサヤ、サヤエンドウ、スナップエンドウと、いろいろな項目があり、集計が複雑でしたので令和5年のキヌサヤに絞って東京市場と大阪市場をみてみました。

東京市場のキヌサヤのピークは5月で、その6割程度を福島県産が占めていました。次に入荷量が多かったのは12月と3月ですが、1~4月、6月も比較的多く入ってきていました。4月までの間は鹿児島、愛知、和歌山県産が多くを占めていました。6月は福島、青森、岩手県産が多くなっていました。

一方、大阪市場のキヌサヤのピークは12月で、次いで入荷量が多かったのは3月、4月でした。大阪市場に入るキヌサヤの8割~9割が和歌山県産でした。

夏から晩秋の入荷量は、東京、大阪市場ともにぐっと減り、ピーク時の1/3を切ります。仕入れ先は北海道や海外となります。大阪市場の10月11月のキヌサヤはペルー産が供給量トップ3に含まれており、東京市場でも北海道以外では中国、タイ、ペルー産が多くを占めていました。

実エンドウ(グリーンピース)

東京市場も大阪市場もデータは「実エンドウ」という項目で集計されていました。東京でのピークは4月、5月、3月、大阪では4月、3月、5月の順になっていました。東京市場は半分程度が鹿児島県産、大阪市場は8割以上が和歌山県産でした。大阪市場の令和5年1年間のグリーンピースの入荷量は、857トンで東京市場の2.7倍でした。近年東京でも「ウスイエンドウ」を見かけるようになりましたが、まだこんなに差があったのですね。

エンドウのすがたかたちの特徴・特性

野菜としての特徴

エンドウはマメ科に属するつる性の植物です。豆苗を再生させるとわかると思いますが、茎を伸ばしていくと先端に巻きひげが出てきます。発芽に適した温度は18~20℃、生育に適した温度は10~20℃といわれています。

マメ科の直物の多くは蝶のような形の花(蝶形花)をつけます。花の後には果実ができます。これがサヤ(果皮)とその中の豆(種子)に該当し、花びらのがくがサヤのがくになります。長さ6-7cmになったものがいわゆるキヌサヤです。開花から2週間程度で収穫できるといわれています。

開花から25日くらいで中の豆が大きくなります。スナップエンドウはこのころに収穫します。

さやの中には両端に幼い種子(豆)が並んでついています。種子はサヤ部分から養分や水が供給されます。

スナップエンドウのサヤの中

実エンドウは気温が低ければ実が大きくなるのに時間がかかり、寒い時期では収穫まで60日程度かかります。しかしが、気温が上がれば25~30日程度で収穫できます。豆の大きさはスナップエンドウと大して変わりません。

エンドウは、完熟して乾燥するとサヤが割れ、種子(豆)が飛び散ります。

エンドウは食べられるタイミングがたくさんあります。花が咲く前の若い芽や茎葉の部分(豆苗)、花が終わったあとの実の部分(サヤエンドウ、実エンドウ)、そして完熟した豆です(前述の「野菜としてのエンドウ」の図も参照ください)。

どんなエンドウがおいしいの?

サヤエンドウ

サヤの緑色がみずみずしく、張りがあるもの、豆が小さめで目立たないものを選びましょう。キズやシミがないこともポイントです。サヤの先のひげ(めしべの名残)が白っぽくピンとしていて、がくの部分がしゃきっとしていると新鮮です。

スナップエンドウ

サヤの緑色にみずみずしさが感じられ、張りのあるものは豆が詰まっています。新鮮さはサヤエンドウと同様に、ひげやがくで見極めましょう。

実エンドウ(グリーンピース)

むき実になっている場合は、粒がそろっていて緑色が濃いものがおすすめです。しかし、むいたものは乾燥したり外皮が硬くなるなど品質が低下しますので、できればサヤ付きを選びましょう。サヤは色のよいもの、割れていないもの、シミなどがないものを選びましょう。

エンドウの保存方法・取り扱い

鮮度が落ちやすいので早めに処理を

サヤエンドウも実エンドウ(グリーンピース)も鮮度が低下しやすい野菜です。入手後すぐにゆでるなどの加工をしてから冷蔵または冷凍保存した方がおいしさがキープできます。とはいえ、毎回予定通りにことは進まないので、生の状態で保存する場合、せめて買ってきたらすぐに下洗いしてクッキングペーパーで包み、ポリ袋に入れて空気を抜き、冷蔵庫で保存するとよいでしょう。こうすると筋取りからスタートできますし、洗った時の水分がペーパーに移ってほどよく乾燥を防いでくれます。野菜庫より低温の温度帯のほうが鮮度は保てます。キヌサヤは1週間以内、スナップエンドウは2-3日を目安に使い切りましょう。

加工保存はできれば加熱してから

冷凍する場合、生のままだと色や食感が悪くなるので、少しの塩を加えた熱湯で固めにゆで(再沸騰後30秒くらい)、冷水にとって粗熱が取れたら平らにし、保存袋に入れて冷凍することをおすすめします。汁物や煮物などに加える場合は凍ったままの状態でOKです。

すじ取り、ゆで方の正解は?

ゆでてから細切りなどにする場合、すじが残っていてもさほど気になりません。しかし加熱してそのままサヤごと食べる場合、特にスナップエンドウは、すじを取らないと口触りが悪くなります。

すじの取り方に正しい方法があるのかな?と疑問がわいたので、調べてみました。するといろいろな方法があることがわかり、もしかすると正解はないのかも、と思いました。考察としてまとめると以下の通りです。

  • キヌサヤの場合、すじは豆が付いている側だけ取り、めしべの名残部分(ひげ)を残すこともある(和食の世界では若い芽を摘まないように、という験担ぎなのだとか)。
  • すじを引く方向は、2つ3つ試しながら決めればよい。
  • ゆでた後にすじを引くと水っぽくなりにくく、ガクのところをつまんで引くと両側が一挙に取れることが多い。
  • しかし、ゆでた後にスナップエンドウのすじを引こうとすると、サヤが崩れて豆が出やすい。

最近は、すじの少ない品種もありますし、個体差もあります。別に気にならない、ゴミやムダをなくしたい、というときは取らなくてもいいと思います。

ゆでるときの塩について、湯に対して1%程度が良いとされています。しかし、その後の調理や好みに合わせて塩加減は調節してください。エンドウは、熱湯からゆでた方が色よく仕上がります。キヌサヤなら再沸騰から1分、スナップエンドウは2分程度で氷水に取り、素早く冷ますと色が止まり、シャキッと感が残ります。水に取るとビタミンが流出するのが気になる、とか、それ単に面倒だわ、ということであれば、そのまま冷ましても問題はありません。季節や個体差があるので、これもお好みで調節してください。すじ取りをしてからゆでたスナップエンドウは、サヤの中に水分が入りやすいので仕上げにペーパー等で水切りをするとよいでしょう。

おすすめの調理方法は?

トウミョウは、炒め物はもちろん、お浸し、和え物などにも使えます。また、かき揚げやスープの具にもなります。やや筋張っているので、短めに切ると食べやすいでしょう。
サヤエンドウ・スナップエンドウはサラダ、和え物、付け合わせ、煮物、吸い物、炒め物など、幅広く使えます。スナップエンドウを主菜の付け合わせにする時はサヤを開き、豆を見せるという方法もあります。
実エンドウは、炊き込みご飯、ポタージュやスープ、煮物、サラダの素材として利用できます。ペースト状にしても使えますので、使い道がかなり広い食材だと思います。

今回、私自身の感覚や経験と海外サイトを見たうえでの主観的な感じ方ですが、フランスやイギリスでは、日本よりグリーンピースを多く食べているような気がします。主菜の付け合わせにどーんと盛ってあったり、マッシュポテトに合わせたり。特にフランスでは豆を軽く煮込む料理が多いイメージがあります。中東や北アフリカ文化の影響もあるかも?

エンドウの栄養・成分について

豆と緑黄色野菜の特徴を兼ね備えている

エンドウは完熟後は豆として食べられますが、その芽や茎、未熟なら種子を包むサヤまで食べることができるお得な?野菜です。栄養面でも豆と野菜の「いいとこ取り」ができます。生長に従って「豆」に近くなるにつれ、栄養成分も豆の特徴が出てきます。

トウミョウ、サヤエンドウ、実エンドウ(グリーンピース)いずれも緑黄色野菜に分類されています。トマトやピーマン、アスパラガスなどと同様に、緑黄色野菜の基準(可食部100g中のβカロテン含有量が600μg以上であること)を満たしていませんが、一度に食べる量が多いなどの理由で、特例の緑黄色野菜なのです。

他の特徴として、サヤエンドウにはビタミンCが60mg/可食部100gと比較的多く含まれていることが挙げられます。

実エンドウ(グリーンピース)は豆の特徴が濃くなり、野菜の中では可食部100gに含まれるたんぱく質やビタミンB1、亜鉛や鉄などのミネラル、食物繊維が豊富といえます。100g中のビタミンB1は通常食べる野菜の中ではトップクラスです。エネルギーが高めなのは糖質とたんぱく質の含有量が多いからです。たんぱく質について、大豆(完熟のゆでたもの100g)とグリーンピース(ゆで100g)を比較すると、グリーンピースは大豆の2/3程度ですが、木綿豆腐100gと比較するとほぼ同格(成分表上はやや多いくらい)です。もっとも、実際に食べる1人前として考えると、たぶんグリーンピースだけで100gを食べるのは多いと感じると思いますが、データ上ではそうなっています。

トウミョウについては、緑黄色野菜の葉菜類に近く、可食部100g中のβカロテン、ビタミンKの含有率が比較的高いのが特徴です。

章末の成分表もご参照ください。

エンドウに多く含まれる健康成分は?

エンドウには、トマトに多く含まれる「リコピン」のような、栄養素以外で機能性をもつ成分はあまり知られていません。しかし、糖質の供給源として考えたとき、米よりも食物繊維が多く、血糖値の急上昇が緩やかな「低GI」食品であること、皮部分には抗酸化物質のポリフェノールが含まれること、前述のようにミネラルやビタミンが含まれていることなどは知られています。また基礎試験レベルでは、抗炎症、抗疲労効果などさまざまは健康効果が調査され発表されています。

なお、エンドウ豆の粉は小麦粉ではないので「グルテン」が含まれないという意味でグルテンフリーです。しかし小麦アレルギーの方は理解されていると思いますが、グルテンフリー=小麦アレルギー除去食品ではありませんので注意が必要です。

一方、エンドウに限らず植物性の食品には栄養吸収を妨げフィチン酸などの物質も含まれていて、ミネラル類や一部アミノ酸の吸収には時間がかかることも報告されています。

さらに少し調べてみると(感覚的な印象ではありますが)、近年エンドウ(豆や豆苗だけでなく廃棄されるサヤも含めて)の機能性に注目が集まっています。溶解性、水や油の保持能力、乳化やゲル化の性能といった物性の面からも、可食フィルム、肉の代替品、粉や液状にして添加する植物由来製品への応用など、食品だけでなく非食品分野などへの検討も進んでいるようです。

エンドウのデータ

分類:果菜類 (a)(b)、 豆類(未成熟)(c)
英名:サヤエンドウ Podded pea (c)、 実エンドウ Garden pea(c)
学名:サヤエンドウ Pisum sativum (c)、実エンドウ Pisum sativum(c)
漢字表記:豌豆(えんどう)、野良豆(のらまめ)(d)
科名:マメ科(d)
原産地:中央アジアから中近東地域(d)

<出典>
a) 野菜生産出荷統計による分類(農林水産省)
b) 日本標準商品分類(総務省 平成2年6月改訂)
c)農林水産省, 作物分類 https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_sasshin/group/sakumotu_bunrui.html(2024年1月参照)
d)板木利隆ほか監修, 『野菜と果物』小学館(2013年)

エンドウの栄養成分
文部科学省 食品成分データベースより作表(値は『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』に基づく)
*1:アミノ酸組成によるたんぱく質、*2:脂肪酸のトリアシルグリセロール当量、
*3:レチノール活性等量、*4:α-トコフェロール、*5:ナイアシン当量、( )は推定値

<出典・参考文献>

  1. 板木利隆ほか監修.『野菜と果物』小学館(2013年)
  2. 農文協編. 野菜園芸大百科 第2版 第8巻『エンドウ・インゲン・ソラマメ・エダマメ・その他マメ』農山漁村文化協会(2004年)
  3. 独立行政法人 農畜産業振興機構.『野菜ブック』(2019年)
  4. 独立行政法人 農畜産業振興機構 ホームページ「野菜」https://www.alic.go.jp/vegetable/index.html
  5. 大阪府栄養士会 栄養・食・よもやま話 なにわの伝統野菜「うすい豌豆」www.osaka-eiyoushikai.or.jp/yomoyama/pdf/ym_002.pdf 
  6. JAグループとれたて百科 グリーンピース https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=31
  7. JAグループとれたて百科 グリーンピース 絹さやhttps://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=33
  8. 公益財団法人 日本豆類協会 『えんどう』https://www.mame.or.jp/syurui/feature/syurui_11.html
  9. 株式会社明治  Hell, Chocolate基礎知識 カカオマスとはカカオニブをすりつぶしたもの
    https://www.meiji.co.jp/hello-chocolate/column/66/
  10. タキイ種苗株式会社 家庭菜園 野菜栽培マニュアル エンドウhttps://www.takii.co.jp/tsk/manual/endou.html
  11. タキイ種苗株式会社 野菜なんでも百科 エンドウ
    https://www.takii.co.jp/tsk/hinmoku/aen/index.html
  12. 藤田智. 『エダマメ-インゲン ラッカセイ ソラマメ エンドウ(NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビ 19)』NHK出版(2022年)
  13. 稲垣栄洋 監修.『食育にやくだつ食材図鑑 1』ポプラ社(2009年)
  14. 板木利隆. 『日本の伝統野菜』岩崎書店(2015年)
  15. 澤野勉, 高橋幸資 編.『新編 標準食品学 各論[食品学II]』医歯薬出版(2018年)
  16. 国連食糧農業機関 Food of Agriculture Organization(FAO)ホームページhttps://www.fao.org/home/en
  17. 農林水産省「作況調査(野菜)」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/
  18. 独立行政法人 農畜産業振興機構「指定野菜及び特定野菜の生産・流通・消費動向」https://www.alic.go.jp/y-kanri/yagyomu03_000001_00248.html
  19. 東京都中央卸売市場 ホームページ https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/
  20. 大阪市中央卸売市場 ホームページ https://www.shijou.city.osaka.jp/sikyoportal/
  21. ベジ探 卸売市場別入荷量・価格 
  22. やさい畑ファーマーズ倶楽部 編. 『プロに教わる 野菜の収穫・保存・加工の技とコツ』家の光協会(2022年)
  23. 島本美由紀. 『野菜が長持ち&使い切るコツ、教えます!』小学館(2020年)
  24. 香川明夫 監修.『八訂 食品成分表〈2022〉』女子栄養大学出版部(2022年)
  25. 新しい食生活を考える会 編著.『食品解説つき 八訂準拠 ビジュアル食品成分表〈2020年版(八訂)〉』大修館書店(2021年)
  26. 生野世方子. 日本食品保蔵科学会誌23(6); 339-347, 1997
  27. 古守知典ほか. 糖尿病33(12); 959-964,1990
  28. Castaldo, L et al.: Antioxidants11; 105, 2022 https://doi.org/10.3390/antiox11010105
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  30. Shanthakumar P et al.: Molecules 27(16); 5354, 2022 doi: 10.3390/molecules27165354.
  31. Wu DT et al.: Foods 12; 2527, 2023 https://doi.org/10.3390/foods12132527
  32. Farshi P et al.: J Sci Food Agric 15; 100927, 2024 https://doi.org/10.1016/j.jafr.2023.100927
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お店に並んでいる野菜だけでなく、畑で育つ野菜にも出会って、野菜を知るとおいしく食べられそうな気がしています。

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