【春野菜物語】 -キャベツ-

キャベツは春以外にも年中出回っています。前回の白菜が英語でChinese Cabbageなら、ふつうのCabbageってどうなの?と気になったのです。また、農林水産省より、キャベツが令和4年3月のお買い得の見込み(東京都中央卸売市場出荷)!と発表されたこともあり、今回は春キャベツ=春野菜=キャベツとしてまとめました。

幅広く使える万能な「洋野菜」は歴史が古く仲間も多かった

キャベツはヨーロッパの大西洋沿岸、地中海などの海岸が原産地といわれ、今も野生種はその地域に幅広く分布しています。歴史は古く、紀元前2400年頃にアフリカに出現して地球の構造プレートの移動に乗じて地中海に渡り、その後交雑を繰り返して複雑に進化したと考えられています2)。遺伝学、言語学研究の観点から、ギリシアで初めて栽培され、紀元前6~8世紀にケルト人とともにイギリスに渡ったとみられていますが、それはケール(青汁の原料として用いられる)のような結球しないタイプのもの。14世紀のイギリスの料理本に今の丸い形と思われる「キャベツ」が、スープの材料として登場していることから、その間にヨーロッパで改良が進んだと思われます2)。日本へは江戸時代にオランダ人が持ち込んで、当初は「オランダ菜」と呼ばれたそうです。

キャベツの系譜1)

今やキャベツといえばとんかつ等フライの付け合わせに定番のせんキャベツ、その他にもサラダ、野菜炒め、スープ、と幅広く使える野菜としておなじみです。ただ、ロールキャベツ、ポトフ、ザワークラウト、コールスローなどと、「和」より「洋」のイメージがあるのは、明治以降の洋風化とともに普及した野菜であり、料理名までもがとかくカタカナで外来のものだからでしょうか。

外葉付きなら捨てずに

キャベツは白菜と同様に、地上に生えている葉の部分を食べる淡色野菜です。丸く巻いた結球部という内側の部分の葉を食べます。春キャベツ以外は葉がしっかりと巻きこんであり、固くてずっしりと重いものがよいとされています。カットしてある場合は切り口が変色していないもの、1個まるごとの場合は外葉の緑が濃くみずみずしいかどうかをチェックして買いましょう。

外葉はそのうち剥いて売られますので、外葉がついている方が新鮮です。外側の葉は固いので加熱調理向き、内側は柔らかいので生食にも加熱にも向いています。千切りキャベツやサラダなどで、見た目や食感を重視したいときは芯に近すぎない位置の葉を利用するとよいでしょう。

保存方法

用途も広く、比較的長持ちしますので、買うなら1個まるごとがおすすめ。購入してからすぐに使わない時は、外葉のまま新聞紙で包んでおけば鮮度が保てます。夏場は野菜庫に入れてください。

1/2や1/4にカットしたものは、空気に触れる面が変色しますので、なるべく早く使いきりましょう。芯の高さが2/3以内のものがおいしいようです。

1個のキャベツから1枚ずつ葉を剥がして残りを保存するときは、成長点である芯をくり抜き、湿らせたコットンなどを詰めてポリ袋に入れ、野菜庫へ。このとき芯の部分を下向きにしておくとよいです。結球する野菜は中心部に成長点があるので、レタスも同じように芯をくり抜くとよいです(切断面は変色しやすいです)。

キャベツの芯をくり抜いたところ
キャベツの心をくり抜いたところ
湿らせたコットンを詰めたところ

キャベツあれこれ

キャベツは仲間も品種も多く、1年を通じて手に入ります。そして歴史から考えても、世界中どこでも入手できる野菜です。

【キャベツの種類】

春キャベツ(新キャベツ、春玉)

秋冬に種をまき4~6月に収穫します。形は丸く、巻きがやや緩いのが特徴。葉がみずみずしくやわらかいので、生食に適しています。

夏秋キャベツ(高原キャベツ、夏キャベツ)

春に種をまき7~10月に収穫します。生育適温が20℃前後のため夏の時期は高原で作られます 。

冬キャベツ(寒玉)

一般に多く出回っているタイプ。形は扁平で色は薄め。巻きが固く葉がしっかりしています。加熱しても煮崩れしにくく、甘味が出るため煮込み料理にも向いています。

グリーンボール

やや小ぶりのボール型で、春から初夏にかけて出回ります。葉は肉厚でありながら柔らかいという特徴があります。

紫キャベツ(赤キャベツ、レッドキャベツ)

葉が肉厚で巻きが固い品種。 色素はアントシアニンで、酸に触れると鮮やかに発色するためサラダやピクルスにも向きます。旬は特にないようですが、東京都中央卸売市場の令和2年の統計を見ると、7月をピークに1年では5~7月が多く出回っていました3)

芽キャベツ

葉の付け根の脇芽が直径2~3cmに結球したもの。太く伸びた茎にびっしりと50~60個も付くことから子持ちキャベツとも呼ばれます。ややほろ苦さがあり、バター炒めや洋風煮込み料理に向きます。1年中出回りますが、寒い時期のものは柔らかく、甘味も増します。また、βカロテンの含有量が高いので緑黄色野菜に分類されます。

※緑黄色野菜は、原則として可食部100gあたりβカロテン当量を600μg以上含む野菜4)


キャベツのデータ

分類:葉茎菜類a)b)

英名:Cabbage, Savoyc)

学名:Brassica oleracea L. var. capitatac)

漢字表記:甘藍、玉名、葉牡丹d)

科名:アブラナ科(結球あぶらな科葉菜類)d)

原産地:ヨーロッパd)

<出典>

a) 野菜生産出荷統計による分類(農林水産省)

b) 日本標準商品分類(総務省 平成2年6月改訂)

c)農林水産省, 作物分類 https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_sasshin/group/sakumotu_bunrui.html(2022年3月参照)

d)板木利隆ほか監修, 『野菜と果物』小学館(2013年)

栄養・その他注目の成分

成分表のデータでは、生の状態の可食部100g(大きめの葉1枚)あたり、カルシウムが43mg、ビタミンCが41mg含まれます。ビタミンCは外葉の方が高く、中葉になるほど低下しますが芯の部分で再び高くなるとされています。芯(茎)は生では硬いですが、刻む、煮るなどで柔らかく食べやすくして食べましょう。捨てたらもったいない部分です。

下表に栄養成分をまとめました。「キャベツ」でも種類によって栄養素の含有量に特徴があります。例えば生の状態では、芽キャベツのビタミンC含有量は一般的なキャベツと比較すると4倍ほどあります。

調理による損失という点では、キャベツの生100gとゆで100gも比較できるようにしましたので参考にしてください。食品成分表の重変化率をみると89%となっていますので、キャベツのビタミンCはゆでると生の状態の37%になります。

また、キャベツには注目の成分としてビタミンUと呼ばれる抗潰瘍成分が含まれています。胃腸薬のキャベジンはその一成分であるメチルメチオニンスルホニウムクロリドを有効成分とした胃腸薬です(ただ、キャベツを1玉食べたとしても設定された用量には及びません)。とはいえ、キャベツあるいはケールは古代には薬草として食べられていた、という話もありますので、体験的に何らかの効果を感じていたのでしょう。

以上、お手頃価格の旬のキャベツを美味しくたくさん召し上がってください。春キャベツが出回ったら、生食でバリバリ、しゃきしゃきいきたいものです。

【栄養成分】

主な栄養素 単位 キャベツ/生 キャベツ/ゆで 紫キャベツ/生 芽キャベツ/生
エネルギー kcal 21 19 30 52
水分 g 92.7 93.9 90.4 83.2
たんぱく質 g 1.3 0.9 2 5.7
脂質 g 0.2 0.2 0.1 0.1
炭水化物 g 5.2 4.6 6.7 9.9
無機質 ナトリウム mg 5 3 4 5
カリウム mg 200 92 310 610
           
カルシウム mg 43 40 40 37
マグネシウム mg 14 9 13 25
リン mg 27 20 43 73
mg 0.3 0.2 0.5 1
亜鉛 mg 0.2 0.1 0.3 0.6
mg 0.02 0.02 0.04 0.07
ビタミン β−カロテン当量 μg 50 58 36 710
A*1 μg 4 5 3 59
D μg 0 0 0 0
E*2 mg 0.1 0.1 0.1 0.6
K μg 78 76 29 150
B1 mg 0.04 0.02 0.07 0.19
B2 mg 0.03 0.01 0.03 0.23
ナイアシン*3 mg 0.4 (0.2) (0.6) (1.8)
B6 mg 0.11 0.05 0.19 0.27
B12 μg 0 0 0 0
葉酸 μg 78 48 58 240
パントテン酸 mg 0.22 0.11 0.35 0.76
ビオチン μg 1.6 1.2
C mg 41 17 68 160
水溶性食物繊維 g 0.4 0.5 0.6 1.4
不溶性食物繊維 g 1.4 0 0 0
食塩相当量 g 0 0 0 0

*1:レチノール活性等量、*2:α-トコフェロール、*3:ナイアシン当量、( )は推定値

文部科学省 食品成分データベースより作表(値は『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』に基づく)

<出典・参考文献>

1)板木利隆ほか監修.『野菜と果物』小学館(2013年)

2)メグ・ハッケナウプト著、角敦子訳.『キャベツと白菜の歴史』原書房(2019年)

3東京都中央卸売市場. 市場統計情報 https://www.shijou-tokei.metro.tokyo.lg.jp/(2022年3月参照)

4)厚生労働省. 健健発0804第1号「日本食品標準成分表2020年の取り扱いについて」(令和3年8月4日)https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210810H0060.pdfc)(2022年3月参照)

5)独立行政法人 農畜産業更新機構.『野菜ブック』(2019年)

6)澤野 勉, 高橋 幸資 編.『新編 標準食品学 各論[食品学II]』医歯薬出版(2018年)

7)吉田企世子 監修.『野菜の栄養素 まるごと便利帳』エクスナレッジ(2020年)

8)本橋登 監修.『からだに効く 野菜の教科書』主婦の友社(2016年)

9)島本美由紀, 『野菜が長持ち&使い切るコツ、教えます!』小学館(2020年)

10)医薬品インタビューフォーム『キャベジンUコーワ錠25mg』2021年10月改訂(第7版)

MINORI(管理栄養士)

MINORI(管理栄養士)お野菜のこと、もっと知って美味しく食べよう!

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健康のためにはしっかり野菜を食べなきゃ。こどものころからそう教えられ、さらに専門的に学習し、以来、野菜を意識的に摂るようになっています。たぶんそれは、大事なことなんだと思います。ですが、まずはおいしく食べたいものです。おいしかったらきっと楽しいし、たくさん食べたくなります。
お店に並んでいる野菜だけでなく、畑で育つ野菜にも出会って、野菜を知るとおいしく食べられそうな気がしています。

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