【冬野菜物語】ハクサイ A story of winter vegetables: Chinese cabbages

令和5年12月前半は、ハクサイがお買い得の見込み、と農水省から発表がありました。出荷量が増加し、価格が平年を下回るとのこと。昨年末も同様の発表がありましたが、このページでは、今まさに買いやすくなっている野菜のひとつ「ハクサイ」についてのお話をします。

ハクサイの原産地・歴史・種類

日本では案外新しい東アジアを代表する野菜

ハクサイ(白菜)は、英語でChinese cabbage(チャイニーズ キャベツ)またはNappa cabbageといわれています。中国が原産と考えられてますが、朝鮮半島でもキムチとしてよく食されていることを考えると東アジアの野菜、といったイメージがあります。日本に白菜が伝わったのは江戸時代末期だそうですが、本格的に広まったのは日清・日露戦争で出兵した兵士が種を持ち帰ってから、とみられていますので比較的新しい野菜なのです。

ハクサイの生産地・分布

世界の生産状況

白菜だけでまとめたFAOのデータはありませんでした。しかし調べてみると白菜は「キャベツ」としてカウントされているようでした。実際にキャベツの生産量のデータを見てみると、世界第3位に韓国、15位に北朝鮮が入っていましたので、その「キャベツ」の中に「白菜」が占める割合はかなり多いものと推測できました(キャベツの世界生産状況も併せてご参照ください)。

国内の生産状況

農水省の統計によれば、令和4年度のハクサイの総収穫量は約874,600トンでした。データのある都道府県の中でその割合をみてみると、茨城県と長野県のトップ2で全体の半分以上を占めていました。以降は群馬県、埼玉県、北海道、大分県、鹿児島県と続き、それぞれ約3%でした(図)。

日本のハクサイの収穫量 874,600トン(令和4年度)内訳 農林水産省 作況調査 第1報より作成https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/

日本のハクサイの収穫量(令和4年度)内訳 21位以降 農林水産省 作況調査 第1報より作成https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/

ハクサイのすがたかたち

白菜は外葉が栄養を送って育つ

白菜は、地上に生えている葉菜の部分を食べる淡色野菜です。いわゆる普通の白菜は、「結球部」という内側の部分です。まず外側の葉から育ち、光合成でつくった養分を中心部に送って外葉の内側に結球を作ります。よい白菜は、葉がしっかりと巻きこんであり、固くてずっしりと重いものです。ですが、だいこんと同様、世帯人数が少ないと白菜1個を全部使い切れないので、半分または1/4カットのものを選ぶことになります。中心部へ養分が送られ続けるため、断面の中心部に膨らみがないものが新鮮です。芯の部分に切り込みを入れると生長を止められるので、切り込みを入れて売っていることが多いと思います。買うときにはチェックしてみてください。

購入4日後の白菜。中心部が生長して盛り上がっている。芯の下の葉元に切り込みなし。

ハクサイの保存方法

白菜は重いし使い切れない!と、買うときはだいたい1/4カットにしている私ですが、実はわりと長持ちする野菜です。丸々いただくこともあるかもしれませんので、保存に関してここに情報としてまとめておきたいと思います。

1個まるごとの場合

新聞紙で包み立てた状態で冷暗所に置きます。冬場は2~3週間大丈夫のようです。新聞紙が湿ってきたら乾いたものに取り替えます。

カットしたものの場合

キッチンペーパーで切り口を覆い、ラップまたはビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室に。1週間程度で食べきりましょう。また、芯の部分から使うようにすると、鮮度が保てます。

1/4にしてくるんで保存
芯の部分をとりのぞいたところ

白菜あれこれ

白菜は、結球タイプ、半結球タイプ、非結球タイプに大別されます。現在市場に流通しているのはほとんどが結球タイプで、主流は内側の芯の部分が黄色く頭部の葉が重なる円筒形のものです。最近では中の芯の方がオレンジ色のものもあり、甘味があり特有の青臭さが少ないのでサラダにも適しています。江戸東京伝統野菜である「下山千歳白菜」(世田谷区)は、昭和20年代に産地で流行した病気に負けず残った白菜です。10kg程度にもなる大きい白菜のため、今ではあまり見かけない珍しい品種となりました。

一方、結球しないタイプの白菜(の仲間)には、山東菜、芯取り菜、長崎白菜、たけのこ白菜(中国紹菜)、といったものがあります。

山東菜は、その名前が示すとおり中国の山東省が原産といわれています。栽培が盛んなのは埼玉県で、小松菜程度の大きさで出荷されています。白菜よりも肉質が薄くてあっさりしていています。

芯取り菜は江戸東京野菜の一つで、唐人菜とも呼ばれかつてはチンゲン菜が今のように出回るまでは主に中華食材として使用されていました。

長崎白菜は別名唐人菜と呼ばれ、長崎の雑煮には欠かせない青菜です。芯取り菜の別名と同じであり、この両者の由来も中国山東省とのことなので、山東菜、芯取り菜、長崎白菜のルーツは一緒かもしれません。他にも名前は違えど各地域でこの手の菜がありそうです。

たけのこ白菜は、たけのこのように長く筒状に育つ白菜で、シャキシャキと歯ごたえがよいのが特徴です。その他、小型のミニ白菜や、紫色の白菜(これを白菜と呼んでいいのか?!)などもあり、細分化すると種類は多そうです。

白菜は、クセがなく淡泊な味のため冬には鍋ものや漬物のほか、スープや炒め物、煮物やサラダなど幅広く使えます。

白菜のデータ

分類:葉茎菜類(a)(b)

英名:Chinese cabbage

学名:Brassica rapa ssp. pekinensis

科名:アブラナ科(結球あぶらな科葉菜類)

原産地:中国

<出典>

分類:a. 野菜生産出荷統計による分類(農林水産省)b. 日本標準商品分類(総務省 平成2年6月改訂)

英名および学名:農林水産省, 作物分類 https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_sasshin/group/sakumotu_bunrui.html(2021年12月参照)

科名および原産地:板木利隆ほか監修, 『野菜と果物』小学館(2013年)

栄養・その他注目の成分

「たっぷり」と表現されていることの多い白菜のビタミンC含有量ですが、生の状態で比較するとキャベツの半分くらいで100g中に19mg。そのほかビタミンKが少し少なめですが、カルシウムやカリウム、その他のビタミン類には大きな差はありません。 オレンジ色の白菜の色素はシスリコピンといい、通常のリコピンより体内に吸収されやすいとされています。また、イソチオシアネート、インドール3カルビノールなどの抗がん物質はアブラナ科の植物に特有の成分として注目されています。

【栄養成分】

主な栄養素単位
エネルギー13kcal
水分95.2g
たんぱく質0.8g
脂質0.1g
炭水化物3.2g
カリウム220mg
カルシウム43mg
マグネシウム10mg
リン33mg
0.3mg
亜鉛0.2mg
0.03mg
ビタミンA*18μg
ビタミンD0μg
ビタミンE*20.2mg
ビタミンK59μg
ビタミンB10.03mg
ビタミンB20.03mg
ナイアシン*30.7mg
ビタミンB60.09mg
ビタミンB120μg
葉酸61μg
パントテン酸0.25mg
ビオチン1.4μg
ビタミンC19mg
水溶性食物繊維0.3g
不溶性食物繊維1.0g
食塩相当量g

文部科学省 食品成分データベースより作表(値は『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』に基づく)

*1:レチノール活性等量

*2:α-トコフェロール

*3:ナイアシン当量

参考:

独立行政法人 農畜産業振興機構. 『野菜ブック』(2019年)

板木利隆ほか監修, 『野菜と果物』小学館(2013年)

澤野 勉, 高橋 幸資 編. 新編 標準食品学 各論[食品学II]医歯薬出版(2018年)

国連食糧農業機関 Food of Agriculture Organization(FAO)ホームページhttps://www.fao.org/home/en

農林水産省「作況調査(野菜)」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/

JAグループ ホームページ https://life.ja-group.jp/

JA東京中央会 ホームページ https://www.tokyo-ja.or.jp/

独立行政法人 農畜産業振興機構.  ホームページ ベジ探 https://vegetan.alic.go.jp/

独立行政法人 農畜産業振興機構. 指定野菜の生産・流通・消費動向 https://www.alic.go.jp/content/001182491.pdf

島本美由紀. 『野菜が長持ち&使い切るコツ、教えます!』小学館(2020年)

地方特性食材図鑑. ホームページ http://g-foods.info/zukan/guide.html

一般社団法人 日本伝統野菜推進協会. ホームページ https://tradveggie.or.jp/

埼玉県庁. ホームページ https://www.pref.saitama.lg.jp/index.html

公益財団法人 東京都農林水産振興財団. ホームページ https://tokyogrown.jp/

タキイ種苗株式会社. ホームページ https://www.takii.co.jp/

株式会社サカタのタネ. ホームページ https://www.sakataseed.co.jp/index.html

MINORI(管理栄養士)

MINORI(管理栄養士)お野菜のこと、もっと知って美味しく食べよう!

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健康のためにはしっかり野菜を食べなきゃ。こどものころからそう教えられ、さらに専門的に学習し、以来、野菜を意識的に摂るようになっています。たぶんそれは、大事なことなんだと思います。ですが、まずはおいしく食べたいものです。おいしかったらきっと楽しいし、たくさん食べたくなります。
お店に並んでいる野菜だけでなく、畑で育つ野菜にも出会って、野菜を知るとおいしく食べられそうな気がしています。

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