【夏野菜物語】トマト

大人も子どもも、好きな野菜の第1位は――毎年行われている「野菜と家庭菜園に関する調査」(タキイ種苗)の結果によれば、2020年を除いて連続してNo.1の地位を維持しているのがトマトだそうです。コロナ禍で始めた人が増えたという家庭菜園でもトマトは人気で、ベランダに置いたプランターに支柱を立てて育てれば十分収穫が楽しめるらしいので、私も来年は苗から植えて挑戦しててみようかな、と思っています。

トマトの原産地・日本の産地・種類

アンデス高地からヨーロッパ、そして日本へ

トマトの原産地は南米のアンデス山地とされ、山や海岸に自生する野生種と栽培種と合わせると計14種類が知られています1)。野生種の実はとても小さいのですが、これが主にメキシコで栽培種のトマトとして発展したと考えられています1)

ヨーロッパに広まったのは、16世紀にメキシコを征服したスペイン人がトマトを持ち帰ったのが始まり、と考えられています。その後トマトはインド、中国を経て17世紀頃日本に持ち込まれました。このときは観賞用の植物としてでした。食用としての栽培が始まったのは幕末。それも主に居留地の外国人用で、現在のように身近な野菜になったのは、第二次世界大戦後のことです。

生食は昭和になってから

明治時代のはじめ、政府はトマトを「蕃柿」と書いて「あかなす」と読ませ、国民に広めようとしましたが、当時の日本の食生活にはなじみませんでした。この時のトマトは北ヨーロッパの品種で酸味や香りが強いものでした2)

しかし第二次世界大戦後、食の欧米化が進むとともに、一般家庭への冷蔵庫の普及や流通の発達などで生野菜が食べられるようになってから、トマトの消費は伸びていきました。

トマトはどのくらい作られている?

デンプンを多く含み主食の代わりになるジャガイモやトウモロコシを除き、世界中で最も生産量が多い野菜はトマトです。日本における収穫量は令和3年度では72.5万トンで、果菜類(きゅうり、なす、トマト、ピーマンなど)の中ではトップ3)

主要産地は、熊本県、北海道、愛知県、茨城県、千葉県(令和3年度のトータルで収穫量の多い順)3)です。近年はミニトマトの生産量が拡大傾向にあります3)

旬はいつ?

トマトはビニールハウスなどで栽培され通年入手可能ですが、東京都中央卸売市場の場合、トマト・ミニトマトともに4月~8月頃が多く出回る時期です4)。令和3年度の場合、6~8月の間は北海道、栃木県、青森県、福島県、岩手県産など東北地方からのトマトの供給割合が多くなっていました4)

形や大きさがいろいろ

日本でよく見かける生食用のトマトは「丸玉」と呼ばれるものですが、加工用のトマトはイタリア産の「ホールトマト」の缶詰の絵にあるような筒型をした縦長のものもあります。(イタリアにはそれだけではなく、さらに多くの種類があるようです)

大きさは重量により、大玉(200g以上)、中玉(大玉とミニトマトの間)、ミニトマト(10~30g程度)に分けられています。さらにミニトマトより小さい粒のマイクロトマトと呼ばれるタイプもあります。

左からミニトマト、ミディトマト(中玉)、大玉

色もさまざまで、特にミニトマトでは、黄色やオレンジ、緑、紫がかった色なども時々見かけます。ミニトマトの方が100gあたりの栄養素の含有量は、数字上は全般に高く、濃い味を感じます。皮も厚めです。(成分表もご参照ください)

品種別に売られていることも

現在の大玉の主力品種は赤い完熟系「桃太郎」ですが、その前の代表的な人気の品種は先端のとがった「ファーストトマト」でした。1980年代からは食べやすさやお弁当の彩りとしてミニやミディトマトの生産も増え、店頭でも「アイコ」「フルティカ」「シシリアンルージュ」など、品種を明記する機会が多くなりました。通販の普及で品種が知られたことや、家庭で苗から育てる場合もお好みの品種を選ぶため、他の野菜よりも品種が知られている気がします。イチゴみたいですね。

フルーツトマト・塩トマトとは

水分や肥料をおさえて育てる特別な栽培方法でできた高糖度のトマトをフルーツトマトと呼んでいます。正式には決まっていませんが、糖度8度以上のものを指すようです。中には果物並みに甘いトマトもあるようです。また、塩トマトといって売られているものは、塩分濃度が高い土壌で育てられたトマトで、こちらも糖度が高め。塩分のため大きくは育たないのですが、酸味が少なく味が濃いトマトです。

トマトの取り扱い・保存など

完熟トマトなら冷凍保存も可能

トマトは夏野菜の代表格ですが、貯蔵に適した温度は8~10°C(完熟トマトの場合)。

寒い時期であれば室温でヘタを下にして風通しのよいところに保存し、暑い時期はキッチンペーパーなどに包んでポリ袋に入れ、野菜室に。なお、トマトがまだ青ければ室温で追熟します。

完熟トマトなら冷凍することもできます。洗ってヘタを取り、まるごとラップに包んで保存袋に入れて冷凍します。半解凍の状態になると皮がすーっとむけます。冷たいまま刻んでサラダやサルサ、すりおろしてスープやソースにも展開できます。 生よりも短時間で火が通るのでそのまま煮てもよしです。

どんなトマトがおいしいの?

トマトは、ずっしりとしていて身がしまり、丸みのあるものが美味しいとされています。 ヘタが緑色でピンと立ちあがっていて、しおれていないものは新鮮=収穫してからの時間が長くない、というしるし。水に入れて沈むものがよいという話もあります。これは実が詰まっていて水より重いというだけでおいしいかどうかはわかりません。酸っぱくても比重が高ければ沈みます。甘いトマトはお尻のほうに白っぽい筋「スターマーク」が見えることがあります。この筋があると糖度が高いとされていますのでチェックしてみてください。

トマトの栄養・成分・調理法について

赤い色はカロテノイドの一種、リコピン

トマトは炭水化物が5%程度、糖分は果糖、ブドウ糖が多く含まれています。1回に食べる量から考えるとペクチンも比較的多いので、食物繊維の供給源にもなり、ビタミンAやビタミンCの供給源と考えてよいでしょう。酸味は主にクエン酸で、そのほかリンゴ酸、えぐみ成分のシュウ酸なども含まれています。色素成分としてよく知られているのがリコピン。ビタミンA効力はありませんが、βカロテンより強い抗酸化作用がある、と報告されています。

リコピンに関して機能性表示をしている製品もあり、トマトを機能性の高い食品だと考える人は少なくないように思います。実際のところ、マウスや細胞などで行った実験での有効性の結果がそのままヒトに当てはまるかどうかを実証することは難しく、また、トマトを摂取すれば健康が得られるという保証もありませんので、過度な期待はせずに食生活全体を見直したり多くの食品をバランスよく食べることが重要です。・・・と、話が少し横道にそれてしまいました。

注目されているアミノ酸

リコピン以外の注目成分はアミノ酸で、なかでもうまみ成分であるグルタミン酸やγ-アミノ酪酸(GABA)が多いことが知られています。グルタミン酸は昆布や醤油に含まれるうまみ成分で、野菜ではトマトが一番含有率が高く、醤油とアミノ酸の構成比が似ている5)ことから調味料としての存在感も納得できます。さらに、加熱によって椎茸に多く含まれるうまみ成分のグアニル酸が増加し、グルタミン酸との相乗効果でうまみを増強することも報告されています6)。一方、GABAは生体内ではグルタミン酸から生成され、血圧上昇抑制効果、精神安定作用、肝機能改善効果などの生理機能があることで知られています。果実の熟成が始まると減少します。そのため、GABA濃度が高い品種なども開発されています。

ケチャッツプはアジア発?!

トマトは傷みやすくそのまま貯蔵することはできませんが、加工して保存することができます。家庭でもジュース、ピューレ、ソース、ケチャップ、ペースト、チリソース・サルサ、ドライトマトなどを作ることはできます(作ろうと思えば)。実際、イタリアやスペイン、ギリシア、トルコなどの地中海沿岸地域方では、夏に1年分のトマトソース類を家庭で作るのが伝統的な習慣だとか。

また、トマトケチャップの起源は、アジアで使われている調味料で“ケチャップ”に似た発音の魚醤類である、という説が有力です。大航海時代にこれがヨーロッパに渡り、さらにアメリカ大陸に渡ったヨーロッパ人が原材料をトマトに置き換えて誕生した、とみられています。日本にはアメリカからトマトケチャップが伝わり、「スパゲティナポリタン」など、日本独自の洋食に使われる定番調味料となりました。

切っただけ、焼いただけでも

日本ではトマトは冷やして生のまま食べることが多いようですが、もちろん加熱して食べることも多く、調理法はバラティに富んでいます。また、加工品も多いので、それらを利用した調理の幅も広く使い勝手のよい野菜です。

生で食べる場合、くし形に切ってサラダにしたりスライスしてサンドイッチの具やメインディッシュの付け合わせにします。また、刻んでソースにしたり、酢や油に漬けて食べる場合もあります。加熱するとビタミンCは失われますが、酸味が和らぎ、うまみが出てきます。南欧料理にはフレッシュトマトより、水煮の缶詰を利用してもよいでしょう。単独でグリルするだけでもよいですし、肉や魚はもちろん他の野菜と合わせても相性がよくおいしくいただけます。

なお、トマトに含まれるリコピンは熱に強く油に溶けやすい性質があることから油を使った加熱調理によって体内への取り込み効率はよくなります。さらににんにくやタマネギと一緒に取り込み混むとさらに吸収がよくなるという研究結果も発表されています7)

<引用文献>

1)田淵 俊人ほか. 沙漠研究 2019; 29(1): 29-43.

2)農林水産省.「消費者の部屋」https://www.maff.go.jp/j/heya/index.html(2022年8月参照)

3)農林水産省.「作況調査(野菜)」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/

4)東京都中央卸売市場. 市場統計情報 https://www.shijou-tokei.metro.tokyo.lg.jp/(2022年8月参照)

5)高田 式久. 日本家政学会誌 2012; 63(11): 745-749.

6)安藤 聡 ほか. 日本食品化学工業会誌 2015; 62(8): 417-421.

7)竹村 諒太ほか. 日本調理科学会誌 2019; 52(2): 57-66.

<その他参考文献>

●板木利隆ほか監修.『野菜と果物』小学館(2013年)

●独立行政法人 農畜産業更新機構.『野菜ブック』(2019年)

●農林水産省「作況調査(野菜)」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/

●澤野 勉, 高橋 幸資 編.『新編 標準食品学 各論[食品学II]』医歯薬出版(2018年)

●中野 明正.『トマトの大百科 まるごと探求!世界の作物』農山漁村文化協会(2020年)

●杉山 信男.『トマトをめぐる地の探検』東京農大出版会(2017年)

●やさい畑フォーアマーズ倶楽部 編. 『プロに教わる 野菜の収穫・保存・加工の技とコツ』家の光協会(2022年)

●香川 明夫 監修.『八訂 食品成分表〈2022〉』女子栄養大学出版部(2022年)

●新しい食生活を考える会 編著.『食品解説つき 八訂準拠 ビジュアル食品成分表〈2020年版(八訂)〉』大修館書店(2021年)

トマト/ミニトマトのデータ

分類:果菜類(a)(b)なす科果菜類(c)

英名:トマト= Tomato (c)、ミニトマト= Cherry tomato (c)

学名:トマト=Lycopersicon esculentum  (c)、ミニトマト=Lycopersicon esculentum var. cerasiforme  (c)

漢字表記:蕃茄(ばんか)、赤茄子(あかなす)、六月柿(ろくげつがき)(d)

科名:ウリ科 (d)

原産地:中央・南アメリカ(d)

<データの出典>

a) 野菜生産出荷統計による分類(農林水産省)

b) 日本標準商品分類(総務省 平成2年6月改訂)

c)農林水産省, 作物分類 https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_sasshin/group/sakumotu_bunrui.html(2022年7月参照)

d) 板木利隆ほか監修, 『野菜と果物』小学館(2013年)

<栄養成分表>

文部科学省 食品成分データベースより作表(値は『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』に基づく)

*1:レチノール当量、*2:α-トコフェロール、*3:ナイアシン当量、( )は推定値
MINORI(管理栄養士)

MINORI(管理栄養士)お野菜のこと、もっと知って美味しく食べよう!

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健康のためにはしっかり野菜を食べなきゃ。こどものころからそう教えられ、さらに専門的に学習し、以来、野菜を意識的に摂るようになっています。たぶんそれは、大事なことなんだと思います。ですが、まずはおいしく食べたいものです。おいしかったらきっと楽しいし、たくさん食べたくなります。
お店に並んでいる野菜だけでなく、畑で育つ野菜にも出会って、野菜を知るとおいしく食べられそうな気がしています。

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