春野菜物語 ータマネギー

タマネギは、主役になることは少ないながらも出番が多い名脇役。日本のタマネギは、秋に収穫するもの(おもに北海道産)と春から初夏にかけて収穫するもの(本州産)に大別され、通常は収穫後に約1か月乾燥させてから出荷されます。新タマネギは、3~4月頃に収穫され乾燥されずに出荷されるタマネギの総称です。みずみずしくて肉質が柔らかく辛みも少ないのでサラダなどの生食に向いています。

農水省は今年(2022年)4月のタマネギの生育状況と価格見通しについて、生産地で干ばつの影響があり小玉傾向、価格は平年より高め、と発表しています。お買い物の際は要チェックですね。

5000年以上昔から栽培され、今ではほぼすべての国に広まっている

タマネギの原産地は中央アジアとみられており、古代メソポタミアや古代エジプト時代には食されていたようです。タマネギは栽培しやすく乾燥に強いことなどから、徐々に世界各地に広がっていったと考えられます。

日本へは江戸時代に伝えられましたが当初は観賞用にとどまり、食用として栽培が始まるのは明治以降。海外から多くの品種が導入され、改良を重ねて春まき栽培用の「札幌黄」(北海道)、暖地秋まき地域では「泉州黄」(大阪府)などの固定品種が生まれタマネギが普及していきました(現在ではこれらの固定品種はほとんど作付けされていないようです)。

現在のタマネギの産地ベスト3は、北海道(66%)、佐賀県(9%)、兵庫県(7%)となっています(令和2年産の作物統計調査より)。

タマネギあれこれ

タマネギとしてふだん食用にしているのは、「りん茎」という葉の一部。これは土の上に育ちます。形から球形種、扁平種、卵形種に、色から黄色、赤色、白色種にそれぞれ分類されます。日本でもっとも多く出回っているのは、黄色種(黄たまねぎ)です。

【タマネギの種類】

黄タマネギ

一般的なタマネギ。辛みがあり保存性が高いのが特徴。春まきの札幌黄、秋まきの泉州黄が主な品種です。

新タマネギ

赤タマネギ

レッドオニオンまたは紫タマネギともいわれ、辛みや刺激中が少ないため、生食向き。酢により赤色が鮮やかになります。

赤タマネギ

白タマネギ

極早生種で、水分が多く辛みが少なく柔らかいのですが、貯蔵には不向き。

ペコロス(小タマネギ)

黄色タマネギの苗を密植すると、直径4cmほどの小さなタマネギができます。シチューなどに。

シャロット

黄タマネギをやや小さく、細長くした形で、ニンニクのように数個に分球しています。フラスン語では“エシャロット”というので、このシャロットを「ベルギー・エシャロット」と呼んだり、若採りのラッキョウを「エシャレット(またはエシャロット)」と呼んで区別しています(ややこしいですね)。

葉タマネギ

りん茎が大きくなる前に葉を付けたまま収穫したもの。見た目は長ねぎの根元に小さなタマネギが付いている感じです。柔らかくて辛みが少ない葉を一緒に食べることができる春先の短い期間だけ出回るタマネギです。

葉タマネギ

タマネギを選ぶときのコツ


一般的なタマネギは、球全体か締まっていて重みのあるもの、首の部分は乾燥して細く締まっているものがよいとされています。柔らかいものは内部が傷んで腐っていることがあるのでご注意を。根が伸びていないもの、皮はよく乾いていて傷がないもの、つやがあるものを選びましょう。

保存方法


黄タマネギを家庭で保存する場合は一つ一つ新聞紙で包み、かご等に入れて風通しのよいところで保存する。新聞紙ではなくネットに入れてつるしても。皮を剥いたものはキッチンペーパーで、使いかけはラップに包んで冷蔵庫で保存します。

外皮を乾燥していない新たまねぎは生鮮野菜と同じですので、冷蔵庫の野菜室に入れて1週間以内に使い切りましょう。

タマネギは冷凍保存もできます。薄切り、みじん切り、くし形など使いやすい大きさ煮きって冷凍用の保存袋に入れて、冷凍します。調理するときは凍ったまま加熱するとよいです。

タマネギのデータ

分類:葉茎菜類a)b)

英名:Onion, Bulbc)

学名:Allium cepac)

漢字表記:玉葱(たまねぎ)、頭葱(あたまねぎ)、西洋葱(せいようねぎ)d)

科名:ヒガンバナ科d)

原産地:中央アジアd)

<出典>

a) 野菜生産出荷統計による分類(農林水産省)

b) 日本標準商品分類(総務省 平成2年6月改訂)

c)農林水産省, 作物分類 https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_sasshin/group/sakumotu_bunrui.html(2022年3月参照)

d)板木利隆ほか監修, 『野菜と果物』小学館(2013年)

栄養・その他注目の成分

タマネギには、たんぱく質や特定のビタミンまたはミネラルが多い、といった栄養学的な特徴はありません。強いて言えば一般的な野菜より炭水化物がやや多く、生の可食部100gあたり約8g、そのためエネルギーが33kcal、ということくらいです。ですが、タマネギ特有の辛みや香りになどに、健康に役立つとして注目されている成分があります。

独特の辛みや匂いの成分はひとつではなく、非常に複雑な話になりますが、硫化アリルといわれるイオウを含む化合物にアリイナーゼという酵素が作用してできたジアリルスルフィド(アリシン)がよく知られる成分です。抗菌・殺菌作用、血液凝固抑制作用、抗酸化作用、血中コレステロール低下作用、疲労回復、などの働きが基礎実験の結果などを含めて多数報告されています。アリシンは水溶性で、安定しない化合物のため、空気に触れさせたり、水さらしをすると減少しますが、ビタミンB1(チアミン)と結合すると安定化して分解酵素の影響を受けにくくなるので、ビタミンB1がより体内に吸収されやすくなるとされています。アリシンはタマネギだけでなく、ニンニクやニラ、ネギ類にも共通する成分です。

また加熱すると辛み成分は揮散して、本来含まれている糖分で甘味が出ます。独特の香りから、香味野菜としても使われ、煮込み料理や肉料理のにおい消し、薬味、オニオンパウダーとしても利用されます。

外皮に多く含まれるケルセチンというポリフェノール類もその抗酸化作用などに注目が集まっており、最近では皮を煮出したタマネギ茶が流行って(?)いるようです。赤玉ねぎなら、紫色のポリフェノール、アントシアニンも含まれていますので、さらに多くの抗酸化成分の摂取が期待できるでしょう。

個人的には今の季節は生でも辛くない新タマネギや葉タマネギをただただ楽しみたいと思います。

【栄養成分】

主な栄養素

単位

たまねぎ/りん茎/生

たまねぎ/りん茎/水さらし

赤たまねぎ/りん茎/生

葉たまねぎ/りん茎/生

エネルギー

kcal

33

24

34

33

水分

g

90.1

93

89.6

89.5

たんぱく質

g

1

0.6

0.9

1.8

脂質

g

0.1

0.1

0.1

0.4

炭水化物

g

8.4

6.1

9

7.6

無機質

ナトリウム

mg

2

4

2

3

カリウム

mg

150

88

150

290

カルシウム

mg

17

18

19

67

マグネシウム

mg

9

7

9

14

リン

mg

31

20

34

45

mg

0.3

0.2

0.3

0.6

亜鉛

mg

0.2

0.1

0.2

0.3

mg

0.05

0.04

0.04

0.03

ビタミン

β−カロテン当量

μg

1

1

0

1500

A

μg

0

Tr

0

120

D

μg

0

0

0

0

E

mg

Tr

Tr

0.1

1.1

K

μg

0

Tr

Tr

92

B1

mg

0.04

0.03

0.03

0.06

B2

mg

0.01

0.01

0.02

0.11

ナイアシン

mg

0.3

(0.2)

(0.3)

(0.9)

B6

mg

0.14

0.09

0.13

0.16

B12

μg

0

0

0

0

葉酸

μg

15

11

23

120

パントテン酸

mg

0.17

0.14

0.15

0.13

ビオチン

μg

0.6

C

mg

7

5

7

32

水溶性食物繊維

g

0.4

0.5

0.6

0.7

不溶性食物繊維

g

0

0

0

0

食塩相当量

g

0

0

0

0

*1:レチノール活性等量、*2:α-トコフェロール、*3:ナイアシン当量、( )は推定値

く)

文部科学省 食品成分データベースより作表(値は『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』に基づく

<出典・参考文献>

1)板木利隆ほか監修.『野菜と果物』小学館(2013年)

2)マーサ・ジェイ著, 服部千佳子訳.『タマネギとニンニクの歴史』原書房(2017年)

3)独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 編著. 『農業技術事典 NAROPEDI』』農山漁村文化協会(2006年)

4)独立行政法人 農畜産業更新機構.『野菜ブック』(2019年)

5)澤野 勉, 高橋 幸資 編.『新編 標準食品学 各論[食品学II]』医歯薬出版(2018年)

6)島本美由紀, 『野菜が長持ち&使い切るコツ、教えます!』小学館(2020年)

MINORI(管理栄養士)

MINORI(管理栄養士)お野菜のこと、もっと知って美味しく食べよう!

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健康のためにはしっかり野菜を食べなきゃ。こどものころからそう教えられ、さらに専門的に学習し、以来、野菜を意識的に摂るようになっています。たぶんそれは、大事なことなんだと思います。ですが、まずはおいしく食べたいものです。おいしかったらきっと楽しいし、たくさん食べたくなります。
お店に並んでいる野菜だけでなく、畑で育つ野菜にも出会って、野菜を知るとおいしく食べられそうな気がしています。

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