アブラナ科の野菜が持つパワー
ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー。これらのアブラナ科の野菜は、単なるビタミン源ではありません。これらが含む特有の成分は、私たちの体の防御システムに働きかけ、様々な疾病予防に役立つことが、世界中の研究で明らかになっています。
今回は、特に注目されているスルフォラファンを中心に、科学的根拠(エビデンス)に基づいた驚きの健康効果をご紹介します。
ブロッコリーの健康効果
アブラナ科野菜が持つ最大の注目成分は、イソチオシアネート類の一種であるスルフォラファンです。特にブロッコリーの新芽(スプラウト)に多く含まれています。

Contents
1. がん予防への期待(特に大腸がん・前立腺がん)
日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性63.3%(2人に1人)、女性50.8%(2人に1人)。がんによる死亡数は、女性の1位、男性の2位が大腸がんとなっています。
アブラナ科野菜の摂取と「がんリスクの低減」は、長年にわたり多くの疫学研究で示唆されてきました。
疾病予防効果 | エビデンス(研究)の内容 | 引用元(情報源) |
結腸がん(大腸がん)リスク低減 | アブラナ科野菜の摂取は結腸がんリスクを低下させる可能性があり、1日あたり40~60gの摂取が最適であるというメタ解析の結果が報告されています。 | [1] Lai B, et al. (2025). |
全般的ながんリスクの低下 | スルフォラファンが持つ強い抗酸化作用や解毒作用により、発がん物質の無毒化を助け、細胞の突然変異や増殖を抑える可能性が基礎研究で示されています。 | [2] QST (2018), [3] 農畜産業振興機構 |
2. 肝機能の改善・サポート
スルフォラファンは、肝臓が持つ本来の防御機構(解毒、抗酸化、抗炎症)を高めることで、肝機能の改善をサポートすると期待されています。
疾病予防効果 | エビデンス(研究)の内容 | 引用元(情報源) |
肝機能マーカー(ALT, $\gamma$-GTP)の改善 | 肝機能マーカーの値が高い男性を対象としたヒト介入試験で、スルフォラファンを継続的に摂取した群では、肝機能マーカー(ALTおよび$\gamma$-GTP)の値が有意に改善されたことが報告されています。 | [4] 東海大学・カゴメ(2014) |
脂肪肝・糖脂質代謝異常の抑制 | スルフォラファンが脂質合成を抑制する分子機構を解明した研究や、脂肪肝・糖代謝異常を抑制する効果に関する論文も報告されています。 | [5] 東京農業大学(2022)、[6] J-Global(2018) |

3. 抗肥満効果・生活習慣病の予防
最近では、肥満やそれに伴う生活習慣病の予防に対する研究も進んでいます。
疾病予防効果 | エビデンス(研究)の内容 | 引用元(情報源) |
肥満の抑制・炎症改善 | ブロッコリースプラウトの成分が、肝臓や脂肪組織の炎症、インスリン抵抗性を改善し、生活習慣病の予防につながる波及効果が期待されると報告されています。 | [7] 金沢大学(2017) |
スルフォラファンを効率よく摂る調理のヒント
スルフォラファンは熱に弱い性質があるため、調理には少し工夫が必要です。
- 軽く加熱する: 生で食べるのが理想ですが、加熱する場合は蒸す・軽く茹でるなど、最小限の加熱に留めましょう。
- 細かく刻む: ブロッコリーを刻んだり、よく噛んだりすることで、細胞内の酵素が働き、スルフォラファンが生成されやすくなります。
- スプラウトを活用: スルフォラファンを最も多く含むとされるブロッコリースプラウトも積極的に活用しましょう。
ブロッコリーの驚異的な健康効果を理解し、毎日の食卓に賢く取り入れて、健康な体づくりを目指しましょう!
ブロッコリーの一生を徹底解剖!【種まきから食卓まで】栄養満点な「仲間たち」も紹介
いつも食べているブロッコリーが、どうやって育っているか知っていますか?
栄養豊富で人気の野菜、ブロッコリー。食卓に馴染みが深い存在ですが、一体どんな成長を遂げているのでしょうか?
ここからは、ブロッコリーの種まきから収穫、そしてその先へと続く驚きの「一生(ライフサイクル)」を徹底解説します。
さらに、実は同じ祖先を持つ「アブラナ科の仲間たち」もご紹介。ブロッコリーを深く知ることで、日々の食事がもっとおあなたのあなたの健康もサポートしますよ!
ステップ | 期間(目安) | 成長の様子とポイント |
① 種まき・育苗期![]() | 約30〜45日 | 季節に合わせ種をまき、適温で発芽させます。特に夏まき(秋~冬収穫)は、暑さに注意し、しっかりとした苗(本葉5~6枚)に育てることが重要です。 |
② 定植・本葉の展開期![]() | 定植から約1ヶ月 | 畑に植え付け(定植)ます。この時期に大きな葉を茂らせ、光合成で栄養を蓄えることが、後の大きな花蕾につながります。 |
③ 花蕾(からい)の形成・肥大期![]() | 収穫まで約1~2ヶ月 | 株が生育し、一定の低温(品種により異なるが15℃以下)に当たることで、中心に小さなつぼみ(花蕾)ができ始めます。これがブロッコリーとして食べる部分です。葉に守られながら、だんだんドーム状に大きく育ちます。 |
④ 収穫期![]() | – | 花蕾の締まりが良く、緑色が濃いうちに収穫します。中心の花蕾を収穫した後も、わき芽から「側花蕾(そくからい)」が出てきて、長期間収穫を楽しめる品種もあります。 |
⑤ 開花・採種期(本来の終焉)![]() | 収穫後 | 花蕾を収穫せずにそのまま育てると、黄色のアブラナ科特有の花が咲き、その後、種(タネ)をつけます。ブロッコリーはタネをつけますが、畑では通常、花が咲く前に収穫されます。 |
1. ブロッコリーの一生(ライフサイクル)を追う
いつも食べている緑色の部分は「花蕾(からい)」といい、花が開花する前の蕾の状態です。では、花蕾ができるまでの成長をステップごとに見ていきましょう。
【知っ得豆知識】ブロッコリーの語源
ブロッコリー(broccoli)は、イタリア語の「brocco(ブロッコ、若芽や若木の意味)」が複数形になった言葉が語源と言われています。つまり、「若芽の集まり」という意味合いを持ちます。
2. ブロッコリーは、驚異の栄養価をもつ「野菜の王様」!
ブロッコリーは単なる付け合わせの野菜ではありません。その高い栄養価から「野菜の王様」とも呼ばれ、美容と健康を支える成分が凝縮されています。
① 圧倒的な含有量!美肌・免疫力の味方「ビタミンC」
ブロッコリーに含まれるビタミンCの量は、なんとレモン果汁に匹敵、またはそれ以上とも言われています。成人一日の推奨量をブロッコリー半株程度で摂取できるほどです。
- 【美肌効果】 コラーゲンの生成を助け、シミやしわの原因となるメラニンの生成を抑制します。
- 【免疫力アップ】 免疫機能をサポートし、風邪などの病気から体を守ります。
② 注目を集める抗酸化成分「スルフォラファン」

ブロッコリーが持つ最も重要な機能性成分がスルフォラファン。先に述べたように、がん予防も期待できる成分です。
- 【解毒・抗酸化作用】 体内の解毒酵素の働きを助け、有害物質の排出や細胞の老化を防ぐ抗酸化作用が長く持続すると言われています。
- 【健康維持】 肝機能のサポートや、胃の健康維持にも注目が集まっています。
- 【効果的な摂り方】 スルフォラファンは熱に弱い性質があるため、効率よく摂るには生でよく噛むのがポイントです。(※ブロッコリーのスプラウトには特に高濃度に含まれます。)
③ 腸活と美容に必須の「食物繊維」
ブロッコリーは、きのこ類にも匹敵するほどの食物繊維が豊富です。
- 【便通改善】 腸内環境を整え、お通じをスムーズにする不溶性食物繊維が多く含まれています。
- 【満腹感維持】 ダイエット中の方にも嬉しい、満腹感を持続させる効果が期待できます。
④ その他、見逃せない栄養素
- 葉酸: 造血作用があり、特に妊娠を希望される方や妊婦さんにとって大切な栄養素です。
- β-カロテン(ビタミンA): 油と一緒に摂ると吸収率がアップし、皮膚や粘膜の健康維持をサポートします。
【調理のコツ】栄養を逃さないブロッコリーの茹で方 ビタミンCやカリウム、スルフォラファンは水溶性で熱に弱い性質があります。栄養を逃さず食べるには、少量の水で蒸し茹でにするか、レンジで加熱するのがおすすめです。
3. ブロッコリーの驚きの「仲間たち」(アブラナ科)
ブロッコリーは、キャベツやハクサイなどと同じアブラナ科アブラナ属の野菜です。その起源は地中海沿岸の野生キャベツ(ケール)で、品種改良によって多様な姿に進化しました。
仲間たち | 特徴とブロッコリーとの関係 |
カリフラワー![]() | ブロッコリーの突然変異によって生まれたと言われ、花蕾が白い品種です。ビタミンCが豊富で、加熱しても損失しにくいのが特徴。 |
ロマネスコ![]() | 「ブロッコ・ロマネスコ(ローマのブロッコリー)」が正式名。幾何学的な形が美しいイタリアの野菜で、ブロッコリーとカリフラワーの特性を併せ持ちます。 |
スティックセニョール![]() | 茎ブロッコリーとも呼ばれ、ブロッコリーと中国野菜の「芥藍(かいらん)」をかけ合わせた日本発祥の品種。茎まで美味しく、甘みが強いのが特徴です。 |
ケール![]() | ブロッコリーやキャベツの祖先にあたる原種に近い野菜。「野菜の王様」とも呼ばれるほど栄養価が高く、健康志向の方に人気です。 |
キャベツ![]() | 同じく野生キャベツが起源。ブロッコリーは「花のつぼみ」を食べるのに対し、キャベツは「葉が結球した部分」を食べます。 |
アレッタ![]() | ブロッコリーとケールをかけ合わせた新しい品種。ビタミンAやβ-カロテンが豊富で、茎の甘さが特徴です。 |
Kuwatoteキッチンおすすめ!ブロッコリーの活用術
ブロッコリーは花蕾だけでなく、茎にも栄養と旨みが詰まっています。
- 茎まで美味しく! 固い外皮を厚めに剥けば、中は甘くてシャキシャキ。きんぴらやポタージュ、炒め物に入れるのがおすすめです。
- 美と健康に! ブロッコリーはビタミンC、食物繊維、スルフォラファン(解毒作用を高める成分)が豊富。特に美肌・育毛を意識する方は、オイルや肉類と一緒に摂ると栄養の吸収率がアップします。
まとめ
ブロッコリーの「一生」やその仲間たちを知ると、日々の食卓にもっと取り入れたいと感じていただけたのではないでしょうか。
私たちKuwatoteキッチンでは、ブロッコリーをはじめとする旬の野菜を「丸ごと美味しく、健康に」いただくためのレシピや、畑の知恵をご紹介しています。ぜひ、他のレシピも参考に、野菜の持つパワーを食卓に取り入れてくださいね!
これであなたもブロッコリー博士。
ブロッコリーの歴史から生産国・地方、栄養価、保存法や調理法
参考文献・引用元
- [1] Lai B, et al. (2025). Association between cruciferous vegetable intake and the risk of colorectal cancer: an umbrella review of systematic reviews and meta-analyses. (詳細な論文情報は検索結果に記載されていないため、研究者名と年で表記)
- [2] 量子科学技術研究開発機構 (QST). 「ブロッコリーの抽出物スルフォラファンに放射線の増感作用があることを発見~がん治療において放射線との併用療法への可能性~」 (2018年12月26日更新)
- URL:
https://www.qst.go.jp/site/qms/1669.html
- URL:
- [3] 農畜産業振興機構. 「アブラナ科野菜のがん予防成分「スルフォラファン」」 (2007年7月)
- URL:
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/joho/0707_joho01.html
- URL:
- [4] 東海大学・カゴメ. 「ブロッコリーの新芽に由来する機能性成分「スルフォラファン」による肝機能改善効果を確認」 (2014年11月19日)
- URL:
https://www.u-tokai.ac.jp/ud-medicine/news/1180/
- URL:
- [5] 東京農業大学. 「研究成果「ブロッコリー由来成分スルフォラファンによる抗肥満効果の分子機構を解明」」 (2022年5月30日)
- URL:
https://www.nodai.ac.jp/news/article/28078/
- URL:
- [6] J-Global 科学技術総合リンクセンター. 「糖脂質代謝異常・脂肪性肝疾患と機能性栄養成分 ブロッコリー由来の機能性成分“スルフォラファン”の脂肪肝・糖代謝異常抑制効果」 (2018年)
- URL:
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201802262685897222
- URL:
- [7] 金沢大学. 「ブロッコリースプラウトに含まれる成分が肥満を抑制!」 (2017年2月17日)
- URL:
https://www.kanazawa-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/170217.pdf
- 国立研究開発法人国立がん研究センター がん統計
- URL:
