10月に入ると街のあちらこちらにオレンジ色のカボチャお化けを目にするようになりますね。日本では2000年ころから盛んになったといわれているハロウィンですが、本家のアイルランドはルタバガという大きなカブをくり抜いてあのランタンを作るのだそう。移民としてアメリカに渡った彼らが、そこで多く栽培されていたカボチャを使ってランタンを作るようになり、ハロウィンといえばカボチャ、というイメージが定着したようです。ちょうど日本でもカボチャがおいしい時期。今回はカボチャについてまとめてみます。
※野菜名の表記について。「野菜物語」の本文ではカタカナ、レシピではひらがな/漢字で表記しています。
Contents
カボチャの原産地・歴史・種類
原産はアメリカ大陸
カボチャはアメリカ大陸が原産のウリ科植物で、その種類はとても多いといわれています。アメリカ大陸にルーツをもつ野菜は多く、カボチャ以外にもトマト、ピーマン、ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ、インゲン豆などがあります。
コロンブスがアメリカ大陸を発見するまで、当地ではトウモロコシ、インゲン、カボチャが特に重要な作物とされていました。カボチャは果実や種を食用にしていただけでなく、中身をくり抜いて乾燥させ、水や食料の貯蔵容器としても使用されていたようです。カボチャは、メキシコの洞窟の紀元前7000~5500年ころの地層から種子や果皮が出土したことから、トウモロコシよりも古くから栽培が始まっていたと推測されています。
日本への伝来
カボチャは、ニホンカボチャ、セイヨウカボチャ、ペポカボチャの3タイプに大別できます。伝来の時期はそれぞれ異なり、ニホンカボチャは1541年、ポルトガル船が豊後(現在の大分県)に漂着し、貿易の許可を求めるために献上したのが始まりとされています。以降、長崎で栽培が始まり、全国に広がっていったと考えられています。名称はカンボジアを経由してきたことからそれが訛って「かぼちゃ」となった、という説があります。
現在流通の主流となっているセイヨウカボチャは、明治時代に米国から品種を導入して普及しました。セイヨウカボチャは南アメリカ高地原産で、涼しい気候のヨーロッパでも栽培されている種類で、特に北海道、東北などの寒冷地と相性が良かったようです。
メキシコの洞窟で見つかった種類と同種のペポカボチャは、明治時代に北海道に飼料用として導入されましたが現在はあまり栽培されていないようです。ただし、ペポカボチャの仲間で例外的な野菜といえばズッキーニ。これは1980年代にイタリアから導入され、今では野菜コーナーに必ずあります。カボチャに分類されていることがあまり知られていないだけかもしれません。
品種-海外でもKabochaで通じるかも
カボチャは、大きくニホンカボチャ、セイヨウカボチャ、ペポカボチャの3種類に分けられます。
ニホンカボチャ
前述のとおり、ポルトガル船の持ち込んだカボチャが日本各地で発展し、定着したのがこちらのタイプ。今ではほとんど店頭で見かけませんが、希少な各地の伝統野菜として存在しています。たとえば表面が深緑色でこぼこ、ごつごつしている「備前黒皮かぼちゃ」は農水省の地理的表示保護制度に登録してあるニホンカボチャです。他に、能登野菜「小菊かぼちゃ」、京野菜「鹿ヶ谷」、なにわ伝統野菜「勝間南瓜(こつまなんきん)」、江戸東京野菜「内藤かぼちゃ」などがあります。味は一般的に、水分が多くねっとりしていて、セイヨウカボチャより甘さが少ないのが特徴です。
また、ひょうたんのような形をしたバターナッツカボチャは(このブログ内の記事→バターナッツカボチャを収穫してプリンに挑戦 もご参照ください)は、ニホンカボチャの仲間です。
話は飛びますが、昭和時代に見たシンデレラの絵本に出てくるカボチャの馬車、下の写真ような和カボチャなのですが、それは私だけ?今はオレンジ色なんでしょうか。
セイヨウカボチャ
1960年代に入り、ほくほくとした粉質系のテクスチャーで人気が高まるとともに、作りやすいことなどから全国的に普及し初め、今の主流になったのがセイヨウカボチャです。
表面の皮の色は黒っぽいもの、白っぽいもの、赤いものなどがあります。現在は圧倒的に黒皮のセイヨウカボチャが多く出回っていますが、首都圏では皮が淡色の栗カボチャもちらほら見かけます。
この日本でよく見るセイヨウカボチャ系品種、海外でもKabochaまたはKabocha squashとして知られています。アメリカの農作物販売サイトでは、Kabochaは日本で一般的に栽培されている品種ではあるが、実は日本では「西洋カボチャ」といわれている品種。日本由来のカボチャなのに「日本カボチャ」とは別のものだというからややこしい、というようなことが書かれていました。同サイトではまた、kabocha=squashであるため、Kabocha squashと呼ぶのは意味が重なるのでおかしい、というようなことも記載されていました。まぁ、それはシイタケが英語でShiitake mushroomと呼ばれているようなもので、違和感しかないのですが、たとえば韓国料理のチゲ(鍋・鍋料理)をうっかりチゲ鍋とか呼んでしまうこともあるので、仕方ない部分もあるよね、なんて思いました。
ペポカボチャ
観賞用、飼料用、野菜用があり、大きさ・色・形などはさまざまです。飼料用以外にはあまり栽培されていない種類です。
食用では、金糸瓜(キンシウリ。別名:そうめんかぼちゃ)がペポカボチャの仲間です。ゆでると果実の繊維がそうめんのようにはがれるこのカボチャは1900年代以降に導入されたといわれています。
イタリア野菜のズッキーニはキュウリのような外観ですが、実はペポカボチャの一種。食べているのは熟す前の果実です。イタリアやフランスでは花の中に詰め物をして食べることもあります。ズッキーニは緑色の他に、黄色いものもあります。味はいわゆるカボチャとは異なり、あっさりとしています。
観賞用のおもちゃカボチャはツートンやしま模様などがあり、といわれます。ハロウィンのオレンジ色のカボチャは、大きさはまちまちですがペポカボチャの仲間です。オレンジ色の手のひらサイズの「プッチーニ」がハロウィン用に山積みになっていることもあります。これは食べられるようで(未だ試したことがない)、甘くて美味しいらしいです。
カボチャの生産地・分布
世界の生産状況
Food of Agriculture Organization(FAO)のデータによれば、2022年のカボチャ類の世界総生産量は約2,280万トン。もっとも多かったのは中国本土で、全体の1/3を占めていました。次いでウクライナ、ロシア、米国と続きました。戦時下でなければウクライナやロシアの生産量はもっと多かったのかな?と思いました。日本の生産量は世界29位でした7)。
日本は寒い時期になると主にニュージーランドとメキシコからカボチャを輸入しています。メキシコは今回世界7位の生産量でしたが、ニュージーランドは世界34位です7)。消費者としては日本で生産できない時期に入手可能となる点はありがたいと思いますが、このようなデータを目にすると、一体どういうことなのかひっかかり、ちょっと調べてみました。
カボチャを輸出する国
2019年のデータになりますが、ウリ科カボチャ属の国別輸出割合は重量ベースでスペイン(26.1%)、メキシコ(13.8%)、ニュージーランド(5.3%)の3か国が上位を占めていました4)。単純に生産量=消費量、というわけではないのですね。メキシコはカボチャの原産エリアですし、栽培には適した風土なのでしょうけれど、他の国でも栽培に適した土地にし、ビジネスとして成り立つようにさまざまな努力があったことがうかがえます。
日本の場合、簡単に言えば、日本人が食べるカボチャを海外で栽培し、それを輸入する、という構図を作ったことで今日があるのだということがわかりました。あらためて日本を含めた世界全体の食事情について考えさせられました。
国内の生産状況
農水省の統計によれば、令和4年度のカボチャの総収穫量は182,900トンで、トップは北海道の94,000トン(全体の51%)でした。次いで鹿児島県6,900トン(4%)、長野県6,600トン(9%)、茨城県6,300トン(3%)と続きました9)。11位以降はその他としてまとめました。詳細は以下のとおりです(図)9)。
カボチャの国内供給量(国内生産量+輸入量)は減少傾向にあり、令和4年は26.7万トンで、10年前の平成24年と比較すると25%低下していました3)。自給率(消費量に対する国内生産量の割合)は、輸入量の減少にともない令和4年で68%と、やや増加傾向にあります3)。 令和4年度カボチャの主な輸入国は生鮮カボチャではニュージーランド(54.5%)とメキシコ(45.2%)で、冷凍カボチャはニュージーランド(62.0%)と中国(34.5%)でした3)。冷凍品は主として業務用で、輸入量は年々減少しています3)。
国産カボチャの旬は夏から秋
2023年のデータをみると、東京都中央市場の入荷量がもっとも多かった月は9月、次いで10月でした。国産カボチャは7月ころから増え、8月~11月まではほぼ輸入かぼちゃの姿がなくなりました。国産のなかでは90%以上が北海道産となっていました。ちなみに、市場の入荷量が3番目に多かったのは6月でしたが、その内訳は国産と輸入で半々でした。
大阪府中央卸売市場も同様の傾向がみられましたが、2023年、入荷量のピークは7月でした。大阪市場に入ってくる夏場の国産カボチャは、こちらも北海道産が圧倒的に多いのですが、東京ではあまり流通しない長野県産や石川県産かぼちゃが上位にあがっていたことと、通年で九州産が多く出回っていることが興味深いポイントでした。
冬は輸入品が多くなります。東京も大阪も2月~4月は集中的にニュージーランド、その他の月はメキシコ、ニューカレドニアから輸入していました。
カボチャの特徴・特性
大きくするには摘果が必要
カボチャはつる性植物でひとつの株から親づるが地面をはって伸び、脇芽が伸びて子づるができます。1株で10mくらいになることもあるそうです。
カボチャの花は大きくて黄色く、早朝に咲きます。同じ株に雌花と雄花ができる雌雄異花同株というタイプです。自然界ではミツバチが授粉に一役買っていますが、食料用には人工授粉で結実させます。受粉した雌花の根元が膨らんだものが実となります。
実ができてきたら、通常は3~4個を残し、他は摘み取って1つの実を大きく育てます。重くなると土に沈み込んでしまうため、それを防止するわらや発泡スチロール製のマットなどを敷くそうです。
収穫後に追熟させると甘くなる
収穫の目安は開花後40~50日たった頃。緑色のカボチャの場合、表面の色が濃く、つやがなくなり爪が立たなくなるほど硬くなったらへたをチェック。白っぽく、コルク状にひび割れしていれば完熟のサインです。収穫した後は風通しのよい日陰に2週間から1か月ほど置き、追熟させます。追熟によりデンプンが糖化して甘味が出てきます。水分がついたままだと腐敗しやすいので、収穫は晴れた日に行うのがよいのだそうです。
カボチャは強い!
カボチャは強健な果菜といわれています。病害虫が付きにくく薬剤散布の必要が少ないうえ、追肥量も少なくて大丈夫なのだとか。また、収穫回数も他の野菜と比べると少なく、連作も可能なのだそうです。栽培にかける労力が少なく、輸送にもあまり気を使わなくてもよいカボチャ。だからこそ、季節が逆の南半球で日本人好みのセイヨウカボチャが栽培されるようになり、そこから輸入することで今では冬場でも生鮮カボチャを食べることが可能になったのですね。
どんなカボチャがおいしいの?
まず、カボチャ自体が完熟しているかどうかを見極めます。前述の収穫のパートでも書きましたが、へたがコルク状に枯れているものを選びましょう。1/4カットでもへたが残っていたら要チェックです。
皮は、つやがあり硬く、重みのあるものがおすすめです。皮の一部が黄色くなっているものがありますが、日光が当たらなかった部分。そのためその色が濃いオレンジ色であれば中の果肉もその色になっていることを示しているので、チェックするポイントになります。
最近のスーパーなどではまるごと1個ではなく、半分や1/4にカットしてあるものが多いのでなかなか見極めがむずかしいのですが、実の色が鮮やかで直感的によい色だ!と思えるものを買いましょう。
あとは種。大きくふっくらしているものは実が熟しています。また、果肉と皮の境目もチェックポイントです。境界線がぼんやりにじんだような状態よりもにじみがなくはっきりしていれば水っぽさが少なくデンプンが糖化しています。
カボチャの保存方法・取り扱い
丸ごとなら2~3か月保存できる
カボチャは保存性が高く、涼しくて風通しのよいところにおいて置けば数か月もちます。その際、水分を飛ばしすぎないようにすることがポイント。新聞紙などで包んでおくとよいでしょう。追熟されて、甘みが増します。
先月、親戚から畑で取れた青皮の栗かぼちゃをいただいたのですが、夏の暑さのせいか、保存方法が悪かったのか、1か月もしないうちに腐ってしまいました。ショックでした。放置せず、ちゃんと観察しておけばよかった、と反省。
さて、半分または1/4にカットしてあるものはワタと種の部分から傷んできます。買ってきたらまずこれらを取り除き、切り口をラップで覆ってポリ袋に入れ、野菜庫へ。1週間以内に使い切りましょう。
生のまま切って冷凍すると薬品臭が出ることも
かぼちゃは冷凍できます。使いやすい大きさに切り分け、空気を抜いて平らにして冷凍保存袋に入れて冷凍すればよいそうです。私は、過去にこれをやってみて、いざ加熱したら薬品臭が出てとても食べられない!という経験をしました。
この薬品臭、調べてみたところ、乾燥によりカボチャの成分が変化して起こる「クリスタル症状」というものらしいことがわかりまた。一般家庭の冷凍庫では急速冷凍が難しいので、冷凍庫に入れることで「フリーズドライ」になってしまうからだと思われます。
そのため、生のまま冷凍するのはやめ、買ってきたらすぐに蒸したり煮たりしてから小分けにして冷凍するようにしています。少し柔らかめになりますが食べたいときにチン!で1品追加できますし、つぶしやすくなるのでサラダやポタージュなどの素としても利用できます。
種は捨てずに-食べられるし、お茶にもなる
最近、食品はできるだけ捨てないで食べられるところは食べよう、というムーブメントが起きています。実はカボチャの種はナッツのように食べることができます。ちょっと手間はかかりますが、洗わずにザルに広げ、1週間ほど干してカラカラになるのを待ちます。その後、フライイパンでから煎りし*、殻を割って中の仁の部分を食べる。また、鍋に水500mLと干した種大さじ3を入れ5分ほど煮出したかぼちゃの種茶も香ばしい。*から煎りするときは種がはじけて飛ぶことがあります。フタをかざして種が飛び出さないようにしましょう。
おすすめの調理方法は?
カボチャは基本的に加熱をして食べる野菜です。焼く、煮る、蒸す、汁の具、ポタージュにするなどのほか、揚げ物にも適しています。カボチャがもっている水分の量を考慮し、ねっとり系は揚げ物やグリルにすると適度に水分が抜けます。ほくほくの粉系カボチャは、煮ものに適しています。水気の多いカボチャの煮崩れを防止するためには、砂糖やみりんを煮る前にまぶすとカボチャから水分が出てくるので、煮汁は少な目で調理できます。焦がさないように注意!
味付けしなくてもよい場合も
よく熟していて糖度の高いカボチャなら、蒸したり、レンチン、あるいはただ焼いただけでも充分甘い仕上りになります。
カボチャはお菓子やパンにも使えます。ゆでてつぶして軟らかくし、サラダにしたり、さらに漉してカボチャのケーキ、プリンなどにも使えます。カボチャあんは和菓子にも洋菓子にも使えます。下ごしらえが面倒なつぶしかぼちゃは、冷凍品や乾燥したフレーク状の加工品も市販されています(お菓子の材料屋さんなどにしかないかもしれません)。
すっかり忘れかけていましたが、ズッキーニもカボチャの仲間。淡泊な味でイタリア料理などの南欧料理には欠かせない食材です。ニンニクといっしょに炒めたり、ラタトゥイユの素材として煮込んだりします。花ズッキーニは、花の中にひき肉などを詰めて蒸し煮にしたり、軽く煮たりゆでたりして食べます。
カボチャの栄養・成分ついて
糖質とカロテンが多く含まれる
カボチャは、野菜類の中では水分が少なく、炭水化物が多いことが特徴として挙げられます。ショ糖、ブドウ糖、果糖など甘さのある糖質も多く含まれ、セイヨウカボチャ(生)のエネルギーは、100g当たり78kcalと野菜としては高い方です。しかしニホンカボチャはその半分程度の41kcalです(成分表のデータはあくまでも参考値です)。甘いカボチャは糖質が多く含まれていますので、エネルギーも高くなります。また、カボチャはニンジン、やホウレンソウに次いでβ-カロテン当量の含有率が高い野菜です。果肉のオレンジ色はカロテンとキサントフィル類に由来します。これらカロテノイドは抗酸化作用をもっています。
成分表のデータは、皮の部分も含んで分析したものです。へたと種、ワタを除いたものですので、できるだけ皮部分もいっしょに食べるようにするとよいでしょう。
糖質が多いから食べてはいけない!?
糖質の摂取過剰を気にしている方や糖尿病で食事をコントロール中の方は、カボチャは糖質が多い野菜なので「野菜とはみなされません」とか「気をつけましょう」などといわれることが多いと思います。この「気をつけましょう」は「食べてはいけない」ではありません。糖尿病の食事の基本的な考え方では、カボチャは主食のごはんや麺、パン、いも類と同じ仲間になっています。そのため、かぼちゃをおかずとして食べるときは、主食の量を減らしてエネルギーの調整をすればよいのです。カボチャの煮物1人前3切れ程度(70~80gですが念のため計量を)の場合、それをごはん約50gに置き換えるようなイメージです。
個人的には、美味しい旬のカボチャが出回っていたら、主食からは摂りづらい栄養素も含まれていますのでおかずに取り入れて楽しんでいただくのがよいと思っています。
冬至にカボチャを食べるのはなぜ?
今は流通や保存の技術が発達して、食べたいものを食べたいときに食べることができます。しかし、昔はそうではありませんでした。カボチャは夏場に結実し、冬至の頃まで貯蔵することができる食品として重宝されていました。
また、エネルギー、カロテンなどの供給源でもあり、薬膳でも温性といってカラダを温める食品に分類されています。そのため、冬に食べると風邪をひかないなど、よい効能が得られるイメージで「冬至かぼちゃ」の習慣が生まれたと考えられます。
ただし保存ができるといっても、長い期間おいておくと美味しくなくなり、栄養素も減ることがわかっています。冬至かぼちゃに年を取らせるな、というのもそのためで、冬至の頃までに食べきった方がよいという意味もあるようです。
かぼちゃに含まれる健康成分は?
カボチャは、果肉はもちろん、皮、ワタ、種などについても全世界で研究されているようです。最近の総説論文をざっくり斜め読みしてみると、カボチャには抗炎症作用、抗菌作用、抗がん作用、抗糖尿病作用、抗高血圧作用などさまざまな生理活性機能があることがわかってきました。カボチャの種にはリグナンやイソフラボンといった植物性エストロゲンが含まれていることも注目されています。また、神経、肝機能、胃粘膜の保護にも効果が期待されています。ただし、これはまだ臨床応用できるレベルではなくその可能性を探っている最中だと思います。
カボチャの果肉に含まれるカロテノイドや食物繊維、ポリフェノールはもちろん、通常は廃棄されてしまう種子、皮、搾りかすも産業利用されるようになってきました。すでに食品分野では天然着色料や食物繊維源、グルテンフリー素材として利用されています。種子はそのままナッツのようにして食べるだけではなく、粉砕したものがスナックや焼き菓子などに幅広く使用されています。オイルを抽出し、化粧品等にも応用されることがあるようです。さらには肥料やバイオガス生成など、用途は今後も広がっていきそうです。
カボチャのデータ
分類:果菜類 (a, b), うり類(c)
英名:Pumpkins/ Winter squash (c)
学名:Mature cultivars of Cucurbita maxima, C. argyrosperma, C. Huber; C. moschata;
C. pepo (c)
漢字表記:南瓜、南蛮瓜(d)
科名:ウリ科d)
原産地:中央アメリカ(ニホンカボチャ)、南アメリカ(セイヨウカボチャ)(d)
<出典>
a) 野菜生産出荷統計による分類(農林水産省)
b) 日本標準商品分類(総務省 平成2年6月改訂)
c)農林水産省, 作物分類https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_sasshin/group/sakumotu_bunrui.html(2024年9月参照)
d)板木利隆ほか監修, 『野菜と果物』小学館(2013年)
カボチャの栄養成分
文部科学省 食品成分データベースより作表(値は『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』に基づく)
*1:アミノ酸組成によるたんぱく質、*2:脂肪酸のトリアシルグリセロール当量、
*3:レチノール活性等量、*4:α-トコフェロール、*5:ナイアシン当量、( )は推定値
<出典・参考文献>
- 板木利隆ほか監修.『野菜と果物』小学館(2013年)
- 農文協編. 野菜園芸大百科 第2版 第5巻『スイカ・カボチャ』農山漁村文化協会(2004年)
- 独立行政法人 農畜産業振興機構 ホームページ「野菜」指定野菜及び特定野菜の生産・流通・消費動向 https://www.alic.go.jp/vegetable/index.htm
- 独立行政法人 農畜産業振興機構 ホームページ「野菜」海外情報 野菜情報 2022年2月号 https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/kaigaijoho/2202_kaigaijoho1.html
- 独立行政法人 農畜産業振興機構.『野菜ブック』(2019年)
- 農林水産省「消費者の部屋」(こどもそうだん,野菜・くだもの)かぼちゃの品種について教えてくださいhttps://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0304/02.html
- 国連食糧農業機関 Food of Agriculture Organization(FAO)ホームページhttps://www.fao.org/home/en
- 大呂興平. 大分大学経済論集65-2; 149-166(2013)
- 農林水産省「作況調査(野菜)」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/
- 東京都中央卸売市場 ホームページ https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/
- 大阪市中央卸売市場 ホームページ https://www.shijou.city.osaka.jp/sikyoportal/
- 八田尚子、大竹道茂監修.『まるごと かぼちゃ』絵本塾出版(2014年)
- 澤野勉, 高橋幸資 編.『新編 標準食品学 各論[食品学II]』医歯薬出版(2018年)
- 日本農業教育学会 監修. こどもくらぶ 編『めざせ!栽培名人花と野菜の育てかた 3 トマト・ナス・カボチャ-実を食べる野菜-』ポプラ社(2015年)
- JAグループとれたて百科 西洋カボチャ https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=25
- 公益財団法人 東京都農林水産振興財団 とうきょうの恵み 緒方湊の誌上セミナー https://tokyogrown.jp/seminar/study11/
- 内田悟. 『内田悟のやさい塾 旬野菜の調理技のすべて 改訂版 秋冬』KADOKAWA(2022年)
- やさい畑ファーマーズ倶楽部 編. 『プロに教わる 野菜の収穫・保存・加工の技とコツ』家の光協会(2022年)
- 島本美由紀. 『野菜が長持ち&使い切るコツ、教えます!』小学館(2020年)
- コープ北陸 組合員Q&A https://www.coop-hokuriku.net/qa/80
- Batool M, et al.: Plants (Basel). 11(11), 1394 (2022) doi: 10.3390/plants11111394.
- Gavril Rațu RN, et al.: Foods. 13(17), 2694 (2024) doi: 10.3390/foods13172694.
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- 香川明夫 監修.『八訂 食品成分表〈2022〉』女子栄養大学出版部(2022年)
- 新しい食生活を考える会 編著.『食品解説つき 八訂準拠 ビジュアル食品成分表〈2020年版(八訂)〉』大修館書店(2021年)